ぎこちない「おはよう」から始まった
最初にB子さんに会ったのは、子どもの入園式の日でした。
同じバス停だったので「あ、同じクラスですね」と会釈するくらいで、会話もぎこちなく、どこかよそよそしい雰囲気でした。
それから毎朝、幼稚園バスを一緒に見送るようになりましたが、「おはようございます」と挨拶するだけの日が続いていました。
雨の日がくれたチャンス
ある雨の日、子どもが傘を忘れてしまい、私ひとりでバタバタしていたところに、B子さんが自分の傘を差し出してくれました。
「うちの子と一緒に入りましょう」と笑いながら言ってくれて、私はその優しさに心がほどけたような気がしました。
そこから一気に距離が縮まり、毎朝のバス待ちの時間が楽しいおしゃべりの時間に変わったのです。
バスが絆をくれた
ある日、バスが発車した後に、一人の子が窓から身を乗り出して「ママー! だいすきー!」と叫びました。
それに応えて手を振るB子さんの姿がとても印象的で、思わず私もウルッとしてしまいました。
それから毎朝、子どもたちと一緒に「いってらっしゃい!」と大きく手を振るのが、私たちママ友の小さな習慣になりました。
卒園式で涙が止まらず
そしてついに卒園式の日。
B子さんと私は顔を見合わせて、ハンカチを取り出しました。
子どもたちの成長もそうですが、それ以上に、朝のたわいもないやり取りがこんなにも心に残るものになっていたことに驚いたのです。
「これからもよろしくね」と言い合いながら、笑顔で写真を撮ったあの日を、私はきっと一生忘れません。
ママ友との絆も、子どもと一緒に育っていくのだと実感した出来事でした。
表面的な付き合いではない、心の通った温かい繋がりを大切にしたいと改めて思いました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。