仕事帰りの雨の日の夜、無言で無愛想なタクシー運転手に戸惑いと苛立ちを覚えた女性。
しかし、降車時にかけられた“ある一言”が、その夜の印象を一変させます──。
今回は筆者の友人から聞いた、心に残るエピソードをご紹介します。

真相

「今日は、家内の命日でして……」
「すみません、無愛想だったと思います」

その言葉に、さっきまで抱いていた不快感が、一瞬で消えてしまいました。

目の前の人がどんな思いでその日を過ごしていたのか、私は自分のことでいっぱいで、想像できていなかったと気づいたのです。

「そうだったのですね」
「大変な日に、ありがとうございました」

そう伝えると運転手は目に涙を浮かべ、
「十分な接客もできず申し訳ありませんでした」
と、再度深々と頭を下げてくれました。

思いやり

人は誰しも、何かを抱えて生きています。

目に見える表情や態度だけで相手を判断することの危うさを、痛いほど感じた夜でした。

自分の心に余裕がないときこそ、目の前の人を思いやることを忘れてはいけません。

車を見送ったあと、私は雨こそあがったもののまだ濡れている足元を見ながら、小さくため息をつきました。

そして『次に誰かと接するときはもっと優しい自分でいよう』と、他者への想像力を持つことの大切さを学んだ出来事でした。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。