ママ友のたまり場
当時Aさんが住んでいた家は小学校のすぐ近くで、よく子どもが同じ小学校のママ友が送り迎えやPTAの帰りなどに遊びに来ていました。
特に仲良くしていたのは3人のママ友で、Aさんとその3人のママ友はもっぱらAさんの家に集まってはお茶をしたり家族ぐるみでバーベキューをしたり、持ち寄りパーティーをしたりしていました。
「この家はママ友のたまり場か(笑)」
旦那さんにそう言われることもあるほど、Aさんの家にはママ友がよく出入りしていたのです。
「だってどこかに行くよりうちでお茶した方が安上がりだし、学校も近いし……」
Aさんは家に人を招くのが好きなので、「お茶をしよう」と言われると「じゃあうちに来て」と家に招くのが当たり前になっていました。旦那さんの言葉には苦笑いしつつも、Aさん自身はそうしてママ友が集まる状況を心地よく感じていました。
ママ友たちの予定とは
夏休みを控えたある日、いつものように仲良くしている3人のママ友がAさんの家に遊びに来ました。
「どうぞ、ゆっくりしていってね!」
Aさんはいそいそとお茶を淹れ、お菓子を出してママ友をおもてなし。
「お茶のおかわり淹れるね」
Aさんがお茶を用意するために席を外している時、リビングで3人がキャッキャと楽しそうに盛り上がっている様子。
「え、なになにどうしたの? 楽しそうだね」
お茶を持ってきたAさんがどうしたのかと尋ねると、ママ友のひとりが楽しそうに答えました。
「明日3人で〇〇に行くの!」
〇〇とは地元の大きな公園で開催されるコンサート。ほかのママ友を見ると、若干気まずそうな顔をしています。
Aさんは『どうしたのだろう』と思いつつ、「私も行きたいな、明日予定ないし」と言いました。
するとママ友の1人がさらに気まずそうな顔になり、こう言いました。
「私たちもうチケット買っちゃってて……もう販売自体も終了しているし......」
どうやら3人だけで計画を立てて、3人だけで行きたいような雰囲気を察したAさんは空気を読んで「そうなんだー、残念」と引き下がりました。
その後その3人のママ友と話していると、どうやら3人だけのLINEグループがあることや、よく3人で出かけていることがわかりました。
「Aさんはあんまり外出しないみたいだし、誘ったら悪いかと思って」
ママ友にそう言われたものの、Aさんは別に外出が嫌いなわけではありません。そのコンサートも、誘われれば喜んで行ったはずです。もちろん、相手に悪意があったとは思えません。ただ、Aさんにとっては寂しい一言でした。
今回このようなことを明確に提示されてしまったAさんは『自分はただお茶とおしゃべりの場を提供するためだけに使われていたのかな』、というモヤモヤした気持ちになってしまい、その後は自分から改めて誘う気にもなれず、結局Aさんはその3人とはあまり会わなくなったそうです。
仲良し4人グループだと思いきや、実はそうではなかったと気づくとなかなかに寂しい気持ちになってしまいますね。それぞれの人付き合いがあるのは理解できますが、自分が親しいと思っていただけにショックが大きいことでしょう。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。