夫婦の形は、少しずつ変わっていくものですよね。支え合いながら信頼を深めていく夫婦もいる一方で、ある出来事をきっかけに関係に亀裂が入る夫婦もいるようです。今回は筆者の知人が、息子夫婦の話を聞かせてくれました。

夢を応援する優しい息子

息子の妻・由香(仮名)が、「独身時代のスキルを生かして在宅ワークをしたい」と打ち明けてくれたとき、誰よりも喜び、応援していたのは息子でした。

「由香の才能を眠らせるなんてもったいないよ」と笑顔で話し、パソコンや仕事部屋の準備まで率先して手伝っていたのです。

家事育児も積極的にこなし、収入も安定している息子。
そんな息子が妻の夢を応援する姿を見て、私は母として誇らしい気持ちになっていました。

消えてしまった優しい笑顔

息子の全面的なサポートもあって、由香の仕事はすぐに軌道に乗り、ついには息子の収入を超えるほどになりました。

家庭内の空気が変わり始めたのは、ちょうどその頃からです。

あれほど「あなたの協力があるから仕事も頑張れる」と感謝していた由香が、今では息子が作る夕食に「もっと効率よくできないの?」とダメ出し。

息子の仕事についても「あなたの稼ぎなんて、たかが知れてるじゃない」と吐き捨てるようになり……。

かつて優しかった妻が、収入と反比例するように冷たくなっていく様子は、端から見ていてもゾッとするものでした。

信じられないほどの手のひら返し

けれど、由香の栄華は長くは続きませんでした。

あれほど順調だった仕事はあっという間に失速し、収入は月数万円ほどに激減。
すると、信じられない事が起きました。

あれほど冷酷な女王様のようだった由香が、まるで何事もなかったかのように、再び心優しい妻を演じ始めたのです。

甲斐甲斐しく息子の世話を焼き、「あなたのおかげで幸せよ」と甘い声で寄り添う姿は、以前と同じように見えました。

でも、その変わり身の早さに、私は正直ぞっとしてしまったのです。

息子の幸せを願いながら

息子は根が優しく、心の底から由香さんを愛していました。
だからこそ、成功したときの彼女の変貌にも、今のあからさまな態度の変化にも、深く傷ついているようです。

息子はこの先も由香と歩むのでしょうか。それとも大きな決断をするのでしょうか。
息子が下す決断を信じて見守りたいと思う一方で、できる事ならもう1度、心から互いを思いやれる夫婦に戻ってほしい……そう祈らずにはいられません。

【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。