大人になると、ふとした瞬間に親から言われた言葉を思い出すことってありませんか? その時はピンと来なくても、時が経つうちに「こういうことだったんだ」と腑に落ちる瞬間が訪れるものです。今回は筆者の友人の体験談をお届けします。
響かなかった母の口癖
「お金や肩書より、人からの“信用”を大事にしなさい」
昔から、母は口癖のようにそう言っていました。
20代だった私は、その言葉を聞くたびに心の中でため息をついたものです。「また始まった」と。
当時の私にとって、世界はもっと分かりやすいものでした。
お給料や役職といった“目に見えるもの”こそが自分の価値で、結果がすべてだと思っていたのです。
信用なんて目に見えないものより、すぐ形になるものの方がずっと大事だと思えて仕方ありませんでした。
無意識に守っていた“母の教え”
それでも不思議なもので、私の日常には母から受け継いだ習慣がしっかり根付いていました。
クライアントとの約束や納期は必ず守る。
どんなに小さなことでも嘘はつかない。
助けてもらったらすぐに「ありがとう」を伝える。
当たり前すぎて意識すらしていませんでしたが、振り返ってみると、社会人になってからも私はずっとそれをごく自然に続けていたのです。
いつも誰に対しても誠実だった母の背中を、知らず知らずのうちに見て育ったからなのかもしれません。
ブランク明け、助けてくれたのは……
月日は流れ、私は30代半ばに。
出産と育児で1度キャリアから離れ、フリーランスとして社会復帰を目指していました。
しかし、数年のブランクは思った以上に大きく、「私のスキルはもう通用しないかも……」と不安で押しつぶされそうな毎日。