結婚当初、義実家のことで悩んでいた私は、実家の母にたびたび愚痴をこぼしていました。
けれど母は決して義両親を悪く言わず、私を諫めるばかり。
その対応に、当時は少し寂しさも感じていました。
義両親のことで悩む日々
結婚当初、生活習慣や価値観の違いから、義実家との関係に悩まされる日々が続きました。
しかし、誰にでも相談できることでもなく。
私は実家に帰るたび、母に思いの丈をぶつけていました。
「雨なのにお墓掃除に行けと言われたの。雨が止んでから行くと言ったら “傘をさせばできる”と返されて、結局ひとりで掃除したんだよ」
「 “高級寿司を食べに行こう”って誘われたのに、会計は私たちだった……」
理不尽だと感じた出来事を、私は母に次々と訴えました。
でも母は、決して悪く言わなかった
ところが、母はいつも静かにこう言うのです。
「夫くんの親だから、仕方がないね」
「大切にしてあげないとね」
一度たりとも、義両親を責めるような言葉は口にしません。
そんな母の姿に、「私の味方になってくれないんだ」と寂しさを覚えたこともあります。
けれど同時に「親がそう言うのだから、頑張るしかない」と自分に言い聞かせ、義実家との関係に向き合っていました。
離婚後、思いがけない言葉
いろいろなことがあり、私たちは数年後に離婚。
久しぶりに実家に帰省したある日、母の友人と話す機会がありました。
私の事情を詳しく知っていたその人は、ぽつりとこう言ったのです。
「あなたのことで、お母さんもずいぶん愚痴ってたのよ。離婚は悲しいことだけど、縁が切れてよかったね」
その言葉に、私は一瞬、耳を疑いました。あの母が、そんなふうに思っていたなんて——。
本音を見せなかった母の優しさ
その時初めて、母も義両親の言動に違和感を覚えていたことを知りました。
でも、もし母があの時「ひどいね」と同調していたら、私はもっと早く義実家に対する気持ちが折れていたかもしれません。
私の前では一切否定せず、けれど陰で本音を吐き出していた母。
あの頃は寂しく感じていたけれど、今ならわかります。
母なりの思いやりだったのだと。
私はようやく、その優しさに気づくことができました。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。