恋愛も結婚も、なかなか思い描いていた通りには進まないもの。ほんの少しの判断ミスや、見えていなかった現実が、後になって心に重くのしかかってくることもあるようです。今回は筆者の知人のエピソードをご紹介します。

運命だと思った恋

当時、私はある企業で働いていて、彼とは職場で出会いました。

彼が既婚者であることは、最初から知っていましたが、穏やかで優しい彼に惹かれ、気持ちを抑えることができなくなってしまったのです。

彼が「妻とは会話もなく、家庭はとっくに壊れている」「君といる時だけが安らげる」と寂しそうに微笑むたびに、私の心は罪悪感よりも「私が彼を救いたい」という思いで満たされていきました。

いつの間にか、私は「彼の隣にいるべきなのは自分だ」と本気で信じるようになっていました。

ついに手に入れた「妻」の肩書き

やがて、私たちの関係は彼の妻に知られてしまい、社内でも噂が広がりました。
好奇の目に耐えきれなくなった彼は、会社を辞めて転職することに。

その後、壮絶な話し合いの末にようやく彼の離婚が成立。
晴れて私は彼の“正妻”になり、輝かしい未来を想像して幸せの絶頂にいました。

……しかし、現実は思っていたほど甘くありませんでした。

義母の冷たい言葉

「これから私が、彼を幸せにしてあげられる」
私は、そう強く思っていました。

でも、彼の両親にとって私は“息子の家庭を壊した女”にすぎなかったのです。

結婚の挨拶で義実家を訪れた日、義母は一度も私と目を合わせようとはしませんでした。
それからも、訪ねるたびに私の分の箸だけが用意されていなかったり、わざとらしく元妻を褒めたり……。

まるで「存在を認めていない」と言わんばかりの扱いを受けました。

私は部外者

耐えきれず、「もう少し私のことも認めてもらえませんか」と涙ながらに訴えた私に、義母は冷たく言い放ちました。

「人の家庭を壊して奪ったもので、“家族”になれると思ったの? 自分がしたこと、全部あなたに返ってきてるだけよ」

その言葉は、鋭い刃のように私の胸に突き刺さりました。

唯一の味方だと思っていた夫は、毎日激務で帰宅は深夜。
「疲れてるんだ」の一言で会話は終わり、私の孤独には気づかないふり。

義母のことを相談しても、「母さんも色々あったんだから、大目に見てやってくれ」と面倒くさそうにするだけ。

“正妻の座”は手に入れました。
けれど、私が本当に欲しかった温かい家庭は、どこにもありません。

今になってようやく、自分のしたことの重さを、心から後悔しています。

【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。