子育てに「正解」なんてあるのでしょうか。子どもの幸せのためと思ってしたことが、将来どんな形で影響を及ぼすかは誰にも分かりませんよね。今回は子育てが一段落した知人が、興味深いエピソードを聞かせてくれました。
偏差値重視の子育て
「いい学校に入れれば、子どもは幸せになれる」
そう思っていた私は、息子が小学生の頃から塾に通わせ、模試の結果に一喜一憂し、内申点にも神経をとがらせ、サポートを続けました。
すべては息子の「幸せ」のためだと信じて疑いませんでした。
幸いにも息子は有名中高一貫校に入り、そのまま難関大学に進学。
さらに一流企業にも就職し、周囲からは「立派に育てたね」と褒められることも多くなりました。
私はまるで“正解の子育て”をした気になっていたのです。
突然の告白
ところが、社会人2年目のある日、息子がぽつりと切り出しました。
「仕事を辞めて、地方で農業をやってみたいんだ」
最初は冗談かと思いました。
だって、あれほどの努力を重ね、やっとの思いでつかんだ“安定”を、わざわざ手放すなんて!
思わず私は、強い口調で返してしまいました。
「せっかくいい大学を出て、一流企業に入ったのに、どうしてわざわざ農業なんて」
そのときの息子の表情は、今でも忘れられません。