「べつに」「うるさい」しか返ってこない日々
最近、娘との会話がめっきり減りました。
高校に入ってから、娘はどこかトゲトゲしくなり、話しかけても「べつに」「うるさいな」と素っ気ない。
もともとおしゃべりだった子なのに、目も合わせなくなってしまいました。
最初のうちは「反抗期なんだな」と受け止めていたけれど、毎日そんな態度を取られると、だんだんこちらもイライラが募っていきました。
無視されるのがつらくて、私も心を閉ざした
朝の「おはよう」に返事がない日が続いたとき、私もわざと無言で朝食を出すようになりました。
娘が帰ってきても「おかえり」と声をかけなくなり、食卓でもスマホを見たまま、お互い目を合わせない。
「どうせ何を言っても、反抗的な返事が返ってくるだけ」。そんな気持ちが、私をどんどん冷たい態度にさせていったのです。
気づけば、私の方が距離を置いていたのかもしれません。
ずぶ濡れで帰宅した夜
ある日、仕事を終えて帰宅したときのことです。
急な土砂降りの雨で傘もなく、びしょ濡れのまま家に着きました。玄関で靴を脱ぎながら、「ああ、ついてないな」とげっそり。
リビングには娘がいましたが、お互い無言。
私は「どうせまた無視される」と、声もかけずにお風呂へ入りました。
お風呂から出て、キッチンに行くと、テーブルの上にコンビニの袋が置いてありました。
テーブルの上にあった手紙
中を覗くと、プリンと小さな手紙が。
『おつかれさま。雨、すごかったね。風邪ひかないように。これ食べて寝て。』
娘からでした。
一瞬、信じられませんでした。
「さっきまで私に目も合わせなかった娘が、こんな優しいことを……?」
いつの間にか、娘に「冷たくされている自分」ばかりを気にして、私は娘に向き合うことをやめていました。
でも、娘はちゃんと見てくれていたのです。私が仕事で疲れていることも、ずぶ濡れになったことも、不器用ながらも気にかけてくれていました。
「ありがとう」が言えた朝
次の日、勇気を出して「昨日の、ありがとう」と声をかけました。
すると娘は「はーい」とそっぽを向いただけ。
それでも、あの手紙が私の心を大きく変えました。
親として娘の態度に一喜一憂するのではなく、娘の心の奥にある優しさや気遣いに目を向けようと思えるようになったのです。
自分もつらくていっぱいいっぱいだったことは事実ですが、会話が少なくても、娘を信じて見守ろうと思えるように、私の態度を改める大切なきっかけとなりました。
娘の純粋な優しい心を私も見習わないといけないなと思います。
【体験者:40代・会社員、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。