不穏な寝言に凍りついた夜
いつものように夫と並んで眠っていた夜のこと。
ふと耳に飛び込んできた夫の寝言。
「ヤバいよ……でも今が底だと信じてる」眉毛をしかめるような表情で、まるで独り言のようにつぶやきます。Nさんはその内容が妙に引っかかりました。
ヤバいよ、信じてる。
繰り返し頭の中で響くたび、胸のざわめきが増していきます。
まさか浮気? いやいや、考えすぎだと自分に言い聞かせても、不安は膨らむばかりでした。
翌朝、夫は何事もなかったかのように朝食をとり、いつも通りに出勤していきました。
鳴りやまないスマホに、胸がざわつく
あの寝言が気になりながらも、日々の忙しさに追われてやり過ごしていたNさん。
けれど、ここ最近、夫のスマホから頻繁に通知音が鳴るようになっていたのです。昼夜を問わず響く音に、胸がざわつきました。
ある夜、さすがに違和感を覚えたNさんが夫に尋ねると、「たぶんニュースアプリじゃない?」と曖昧な返事。
しかし、次の日もそのまた次の日も、夫はスマホを手放さず、ため息をついています。
やっぱり浮気? 疑念は膨らみましたが、どこか様子が妙です。
考えれば考えるほど不安が募るので、Nさんは夫が入浴中、こっそりスマホをのぞく決意をしたのです。
スマホが暴いた、まさかの“裏の顔”
夫が入浴している間、Nさんはそっとスマホに手を伸ばしました。
指先の震えが止まらず、心臓の鼓動が耳の奥で鳴り響きます。恐る恐る画面をつけたその瞬間、ちょうど着信の通知が目に飛び込んできました。
次々と鳴り続ける通知音に、不安がじわじわと膨らんでいきます。
「まさかとは思うけれど……」
嫌な予感を振り払えないまま、夫がよく使う語呂合わせを入力しました。
すると、あっけないほど簡単にロックが解除されました。
画面いっぱいに並ぶのは「トレード」や「コイン」の文字が入ったアプリたち。
胸がざわめくのを感じながらメモを開くと、仮想通貨の銘柄メモがずらり。
さらにLINEには、「絶対に儲かる」「暗号資産で一発逆転」といった怪しげなフレンド登録がびっしり。
どれもこれも、儲け話ばかりの公式アカウントです。