義母の怒声が──
もう何日こうして過ごしているんだろう——。
GWに入ってから、夫は毎朝布団から出てきません。昼近くまで寝たままです。
梨花さんは、ひとり台所で静かに洗い物をしていました。
ふと顔を上げると、義母がじっと見つめています。「また何か言われるかも」胸がざわつきました。
「いいかげんにしなさいよ!」
怒声が響きます。梨花さんは思わず手を止めました。でも、それは夫に向けられたものでした。「奥さんがぜんぶやってるのよ!」。義母の怒りが夫にぶつけられます。
思わぬ展開に、梨花さんは息をのみました。
「こんな息子でごめんなさいね……あなた、しっかりしているわね」ふいにかけられた言葉が、胸にふっと明かりを灯したようでした。
気づけば、味方ができていた
帰るころには、義母と自然に笑い合えるようになっていました。ぎこちなかった距離が、ぐっと縮まったように感じたのです。「また帰ってきてね」と義母が手を振ったとき、梨花さんは素直にうなずきました。
夫のだらしなさは変わらないまま。でも、義母が夫を一喝したあの瞬間、思わずニヤけてしまいました。それだけでなく、義母が「ちょっと休んで」と声をかけてくれるようになったことが、何よりうれしかったのです。
すべてがうまくいったわけではありません。それでも、義母と少し仲良くなれた気がして、梨花さんはうれしくなりました。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。