お客として訪れる飲食店は楽しいものですが、店員側から見ると「実はこれ、困ります……」と思うようなことって、実はたくさんあるようです。今回は友人が大学時代のバイト先で体験したエピソードをご紹介します。

その注文方法、実は……

都内の居酒屋でアルバイトしていた頃のことです。週末の夜は特に忙しく、オーダーを取りながら店内を走り回っているような状態でした。

その日も店内は満席に近い状態。次から次へとオーダーが入る中、若い女性グループが来店されました。

テーブルに着くなりメニューを開き、楽しそうに話し始める彼女たち。しばらくして、彼女たちの中の1人が私を呼び止めました。

私がテーブルに向かうと、すぐに「これと、これと、あとこれ、お願いします!」とメニューを指差し、注文を始められました。

店員側から見ると

私は一瞬戸惑いました。指差し注文の場合、まずお客様の指先を追うことに神経を集中させなければなりません。そして、それが何の料理なのかを確認し、復唱……この作業を何品も繰り返すのは、実はとても時間がかかるのです。注文ミスにも繋がりかねません。

「料理名で注文していただけたら、ありがたいのにな……」正直そう思いましたが、お客様にそれを指摘するのは失礼にあたります。
ぐっとこらえて、笑顔で注文を受けました。

もしかして何か失礼なことを?

注文を終えた後、少し離れてから振り返ると、彼女たちが何かヒソヒソと話している様子が見えました。
「もしかして私、何か失礼なことをしちゃったのかな……?」と不安になりながらも、他のテーブルのオーダーに追われ、彼女たちのことは一旦忘れてしまいました。

しかし、しばらくして彼女たちのテーブルに料理を運んでいくと、注文した女性から「さっきは指差しで注文してしまってごめんなさい……」と謝られたのです。

相手の立場を考える

「実は、友達に『指差し注文は店員さんに迷惑かも』って指摘されて……忙しいのにすみませんでした」と女性は少し恥ずかしそうに続けました。

私は驚いて「いえいえ、とんでもないです! お気遣いありがとうございます」と笑顔で答えました。

もしかしたらグループ内に飲食店で働いている人がいて、指摘してくれたのでしょうか。とにかく、お客様自身に気づいてもらえるのが一番ありがたいことです。

私もこの仕事をしていなかったら、悪気なく指差しで注文していたかもしれませんし、相手の立場に立って考えることの大切さを改めて実感する機会になりました。
どんな状況でも、相手への配慮を忘れずにいたいものですね。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。