前夜、父の付き添いで徹夜し、昼に母と交代。
家で休むべきところを、気分転換したくて友人宅へ向かう途中の出来事です。
突然の事故、動けなくなった私
近道をしようと自転車で一方通行路に入り、出会い頭にバイクと接触しそうになりました。
急ブレーキをかけたもののバランスを崩し、膝を激しく打ちつけ、動けなくなってしまいます。
転んだ場所には壊れたブロック塀があり、傷が深く出血も多かったため、私は座り込むしかありませんでした。
すると、通りすがりの妊婦さんが心配そうに歩み寄ってきます。
妊婦さんの優しさに救われる
「大丈夫ですか?」
彼女のおなかは大きく、8カ月くらいに見えました。
きっと自分のために持っていたであろうペットボトルの水を、何のためらいもなく開けると、傷口に優しくかけて洗ってくれます。
そして、彼女のミニタオルでそっと押さえてくれました。
「汚れてしまいますし、自分でやります」
と伝えましたが、彼女は優しく微笑み、
「大丈夫ですから使ってください」
と膝をつき、手当てをしながら、私のそばに寄り添ってくれました。
「救急車を呼びましょう」迷わない判断
本当は (救急車を呼ぶほどではないかな) と迷っていましたが、傷口を見た彼女は迷わず
「救急車を呼びましょう」
と言い、すぐにスマホを取り出しました。
慌てて
「それは自分で」
と伝え、私が通報。
「ありがとうございます、もう大丈夫ですよ」
と伝えても、彼女はその場を離れませんでした。
背中をさすりながら、
「痛いですよね、もうすぐですからね」
と何度も声をかけてくれる妊婦さん。
その優しさに、不安も痛みも少しずつ和らいでいきました。
感謝を伝える間もなく、静かに立ち去る姿
やがて救急車が到着し、彼女は救急隊員に状況を説明してくれました。
私はお礼を言おうとしましたが、その瞬間、彼女はにっこり微笑み、そっと立ち去ってしまいます。
「せめて名前だけでもお聞きしたかった……」
そう思いましたが、救急車が出発してしまい、どうすることもできませんでした。
数年経った今でも、彼女の温かさと優しい笑顔を忘れることができません。
いつか、私も彼女にもらった思いやりを、誰かに返せるようになりたい。
そう思わせてくれる出来事でした。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中