素敵な紳士
そのときです。渋く、重厚な声が店内に響きました。
「若いお客様を大切にしないで、どうするんですか」
振り返ると、常連らしき紳士が、毅然とした態度で例の店員に語りかけていました。
「お店側も、我々お客も、互いを尊重し合って、美味しく幸せな時間を共有したいものです。せっかくの旨い鮨なのに、もったいないとは思いませんか」
紳士の言葉を聞いた大将は、はっと気づいたような表情で私たちに深々と謝罪してくださり、店員もそれに続きました。
私たち夫婦はすっかり恐縮してしまったのですが、それを見ると紳士は、なんとお酒を振舞ってくださいました。
「お若い方々が高級店に足を運んでくださるのは、とても素晴らしいことですよ。これに懲りずに、これからも素敵なお店で食事を楽しんでください。きっとまたご一緒できるのを楽しみにしていますよ」
これから、夫婦ともに
もう高い店なんか来ない――。
そんな気持ちになっていたのですが、この紳士の優しさに、私は心打たれました。
少し背伸びしてみて、痛い目を見ながらでも、こんな素敵な大人になれたらいいな。
良い場所や人に、見合う自分になってみたい。
そう、前向きに感じることができました。
私たち夫婦は、世間から見たらまだまだ未熟なのでしょう。
しかし、ともに手を取り、様々な経験を重ねながら、将来、素敵な紳士淑女になれたらいいねと話しています。
【体験者:30代女性・会社員、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。