青春時代に交わした約束の、胸打たれるエピソードを、筆者の先輩が話してくれました。私たちは大人の階段を上がるたび、過去に何かを置いてきたのかもしれません。みなさんも桜を見上げると、人生の様々なシーンが思い浮かぶのではないでしょうか。
桜の約束
「10年後にまた会おう」
桜の季節になると、あの日の約束を思い出します。
私が通っていた高校の正門横には、とても美しい桜並木が広がっていました。
仲の良かった同級生たちと、毎日歩いた大好きな道。
卒業式の日に私たちは、満開に咲き乱れる桜の木の下で、必ず10年後にここで再会しようと誓い合ったのです。
「約束だよ。これからもずっと友達でいようね」
果たされなかった再会
しかし、新しい環境でそれぞれの人生を歩み始めた私たちは、卒業してすぐは何度か会っていたものの、次第に疎遠になっていきました。
進学、就職、結婚、出産。
20代は本当にめまぐるしく、多くのことを経験しました。
たくさんの出会いや別れもありました。
「今」を必死に生きているうちに、高校生だった自分は、いつのまにか「過去」になっていったんですね。
忙しい日々の中で、約束の日はあっという間にすり抜けていき、みんなとの再会は果たされぬまま、私は40代になりました。
あれは青春時代の思い出。みんな、大人になると昔の友達とは会わなくなるものだ。
そう思いつつも、春になると、懐かしい気持ちとともに胸がちくりと痛みます。
当時の連絡手段はメールだったため、もう彼女たちの連絡先もよくわかりません。
みんな、元気にしているだろうか。
誰からも連絡はなかったし、もうあんな約束忘れているよね。
やっぱり、私だけが覚えているのかな――。