友人と旅行に行った際、化粧水や洗顔料を忘れて友人に借りた経験のある人も多いのではないでしょうか。少し申し訳ない気持ちで借りる人が殆どですが、中には全く悪びれない人もいるようです。今回はそんな化粧品の貸し借りで不快な思いをした経験のある筆者の知人、Tさんのお話です。

いつも一緒に旅行に行く友人

Tさんは当時独身で、学生時代からの友人のMさんと2人で仕事の休みを合わせて旅行に行くのを楽しみにしていました。

Mさんとは旅先で食べたいものや行きたい場所の趣味が合うことや、同じ業種で休みが合わせやすいという理由で、国内の温泉地や、たまに海外まで必ず一年に2回は旅行に出かけていました。

「ごめーん、〇〇貸して!」
Mさんは旅行にあまり大きな荷物を持って行きたくないのか、持ち物を最小限まで厳選して持ってくるので、化粧水や洗顔料などを忘れてくることがしばしば。
「いいよー、これ使って」
Mさんに言われるたびにTさんは自分の化粧品を貸していました。

そのうちに「Tが持ってきてるだろうから借りようと思って」と全く持ってくることがなくなったので、Tさんは気兼ねなく使えるようにリーズナブルな価格帯の化粧品を毎回Tさんのぶんまで持って行っていました。

セレブな友人が加わって……

そんなある年、TさんとMさんは学生時代のもう1人の友人を誘って3人で旅行に行くことになりました。

その友人はすでに結婚していて、お相手はIT系企業の社長といういわゆるセレブ妻。しかし3人で顔を合わせると学生時代と変わらない雰囲気で、3人旅は楽しいものになりました。

そして夜。
3人で温泉を楽しみ、Tさんはお風呂上がりにMさんも使えるよう化粧品の入ったポーチを洗面台に置こうとしました。
「ねえねえ、化粧水貸して?」
しかしMさんがそう言って頼んだのは、セレブ妻の友人のほうでした。
「いいわよ」
「ありがとう! これすごく高いやつでしょ? さすがセレブ妻だよね」
Mさんはそう言いながらセレブ妻が差し出した化粧水や乳液を遠慮なく手のひらに出しました。

「あー。1回いい化粧品使うともう戻れなくなりそう! Tももっといいやつ使ったほうがいいよ。いつも安いやつじゃんね」
その言葉にTさんは絶句。

その後TさんはMさんと旅行に行った先で「化粧品貸して」と言われても、「私のは安いやつだから使いたくないでしょ」と断るようになりました。

それからはどちらからともなく旅行に誘う回数が減り、Tさんが結婚して遠くに引っ越したことで、Mさんと旅行に行くことはなくなってしまったそうです。

悪気はなかったのかもしれませんが、人から借りて使わせてもらっているものに文句をつけるのは良くないですよね。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2024年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。