夫を早くに亡くして……
Hさんは子供が生まれてすぐに旦那さんを事故で失い、女手ひとつで子供を育てることになりました。
しかし両親や義両親、ご近所のママ友たちの協力があったおかげで、なんとか仕事をしながら子供を育てていくことができたのです。
特にご近所のママ友たちは子供のお迎えや行事の際など、Hさん親子にとても良くしてくれました。
「いつもありがとう」
Hさんは感謝の気持ちを忘れることなく、ママ友に何か困ったことがあったときには全力で協力をして恩返しをしていました。
特に親切にしてくれたママ友
ママ友たちは皆Hさん親子に親切にしてくれていましたが、中でも特にHさん親子の世話を焼いてくれるママ友がいました。
その名もOさんといって、Hさんの家のすぐ近くに住んでいる裕福な家の奥様。
手料理を差し入れてくれたり、どこかに遊びに行くときや買い物に行くときなどに一緒に連れて行ってくれたりと、OさんはとにかくHさん親子に親切にしてくれます。
しかし旦那さんが亡くなって十数年経ち、子供が高校に上がって生活がなんとか落ち着いてきた今でも何かと世話を焼いてくれようとします。
「だってあなたは可哀想な人だから」
これはOさんの口癖で、何かにつけては旦那さんを亡くしたHさんを「可哀想」と言います。
そこでHさんはOさんを安心させるためにも、ある日思い切って言うことにしました。
「もう大丈夫よ。さすがに立ち直ってるし、私も子供も可哀想じゃないよ」
するとOさんは急につまらなそうな顔で言いました。
「なーんだ、可哀想だから親切にしてあげてたのに」
Hさんは、Oさんは人を憐れむことで自分の幸せを感じるタイプの人間だったのだとやっと気づきました。そして子供の進路が分かれたのをきっかけに、これまで優しくしてくれたことに感謝しつつも、少しずつ距離を置いたそうです。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。