子供への期待は親心の表れ。我が子の輝かしい未来を願うのは当然のことです。しかし、その愛情が時に過剰な期待となり、子供の肩に重くのしかかることもあります。今回は筆者の友人が自身のエピソードを聞かせてくれました。

完璧を求める母

幼い頃から、母は私に完璧を求めてきました。

勉強、ピアノ、バレエ……何事にも「1番でなくてはならない」というプレッシャーが常にあり、テストで98点を取れば「どうして2点落としたの?」と叱責され、ピアノのコンクールで2位になれば、「来年は必ず1位を取りなさい!」とプレッシャーをかけられます。

常にそんな状態で、家でも安らげない子供時代でした。

完璧でいなければ愛されない

親の期待に応えたい、母を喜ばせたいと、私は必死に努力しました。
実際、良い成績を取ったり賞状をもらう度に、母は喜んでくれました。

しかし、それは束の間の喜びでした。
すぐに次の目標を設定され、また努力の日々が始まります。まるで、終わりのないマラソンを走っているような日々……。

【完璧でいなければ愛されない】。私はそう思い込んだまま成長しました。

大人になっても逃れられず……

大人になってからも、その呪縛からなかなか逃れられませんでした。

仕事ではどんなに小さなミスも許せず、常に緊張状態。同僚が休憩している間も、私は机に向かい作業。
プライベートでも、常に完璧な自分でいようとして疲弊し、心の底からリラックスできることなんてほとんどありません。

そんな私が、初めて「完璧じゃなくてもいいんだ」と思えたのは、今の夫と出会ってからのことです。

夫は、私が徹夜で資料を作っているのを見ると、「もう寝なよ。頑張りすぎだよ」と声をかけてくれ、私が疲れてソファで寝落ちしていると、毛布をかけてくれました。
完璧ではない私を、ありのままに受け入れてくれたのです。

夫の言葉で救われた

夫のおおらかな性格のおかげで、私は少しずつ解放されていきました。
ミスを恐れすぎず物事にチャレンジできるようになり、たまには家事をサボって夫と映画を見に行く日もあります。肩の力が抜けて、心も体も軽くなりました。

夫はいつも「少しくらいだらしない部分があったほうが人間らしくていいじゃん」と言ってくれます。

それでも、母に会うとどうしても過去に引っ張られてしまうので、今は適度に距離を置いています。私のことを思ってしてくれていたことなのは理解しています。親不孝なのかもしれませんが、完璧でなくともありのままの自分で生きていきたい。それが、今の私の正直な気持ちです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。