雪国の故郷へ
久しぶりに帰省した故郷の景色は、白いベールに包まれていました。運悪く帰省のタイミングで記録的な大雪に見舞われたのです。
実家の用事で帰省したものの、用事が済んでしまえば退屈な時間が待っているだけ。
私は家族が止めるのも聞かず、車で30分ほどのスーパーに出掛けました。
吹雪の中、買い物を済ませて車に戻り、帰路についたまでは良かったのですが……
みるみるうちに積もる雪に視界は遮られ、車は思うように進まなくなっていきました。
大雪の中で立ち往生
とうとう車は完全に立ち往生。スマホを取り出して家族に連絡しようにも、圏外で助けを求めることすらできません。
絶望的な気持ちでハンドルに頭をうずめていたその時、遠くからかすかなヘッドライトの光が見えました。
ゆっくりと近づいてくる1台の車。
その窓から覗く顔を見て、私は息を呑みました。なんと、中学時代の同級生で、当時犬猿の仲だったA子だったのです!
A子もすぐに私だと気づいたようで、驚いた表情を浮かべていました。
犬猿の仲の同級生と再会
しかし、A子は躊躇なく車のドアを開け、「大丈夫?!」と声をかけてくれました。
そして、自分の車に私を乗せ、毛布と温かい飲み物までくれた上、遠回りして家まで送り届けてくれたのです。
「本当にありがとう……!」私は何度も頭を下げ、感謝の気持ちを伝えました。
「無事でよかった」と微笑むA子の笑顔には、中学時代の記憶にある意地悪な面影は全くなく、穏やかで優しいものでした。
新しい友情
翌日、吹雪がおさまってから、私は改めて御礼を持ってA子の家を訪れました。
ゆっくり話してみると、彼女は当時私が思っていたよりもずっと優しく、そして思慮深い人だったことが判明。
私たちは昔話に花を咲かせ、大人になってからのそれぞれの近況を語り合いました。
「これからは帰省する時に声をかけるね」別れの際、私がそう言うと、A子は「うん、絶対ね!」と笑顔で答えてくれました。
あの頃の私は、A子のほんの一面しか見ていなかったのかもしれません。そして、人は変わりゆくものです。
雪に閉ざされたあの日、思いがけない再会が私に大切なことを教えてくれました。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。