飲食店にとって【長く通ってくれる常連客】の存在は本当にありがたいものですが、時にはトラブルが起きてしまうこともあるようです。今回は筆者が、飲食店で働く知人から聞いたお話をご紹介します。

値上げのたびに私を呼び出す常連

私はレストランで雇われ店長をしているアラフィフ女性で、かれこれ20年以上同じお店で働いています。

レストランは繁盛していて活気があり、オーナーもスタッフも皆いい人です。しかし近年、オーナーや私が頭を悩ませていることが。

それは昨今の「物価高」。食材費、電気代などほとんどの経費が上がっているため、お客様に提供する料理の値段を上げざるを得ません。

値上げによりパタリとこなくなってしまうお客様も多いなか、それでも変わらず通い続けてくれる常連さんには心から感謝しています。

ただ、そんな常連さんの中に、少し困った方がいました。それはAさんという男性で、私が働く前(つまり20年以上前)からお店に来てくれている人です。

Aさんは、メニューが値上げするたびに私を呼び出し、「今まで●●円で提供してくれていたから注文していたのに、こんなに値上げされたらもう頼めない」「他の店は同じようなメニューをもっと安く提供している」などと苦言を呈してくるのです。

Aさんの気持ちもわかるのですが、かと言って値段を下げるわけにもいかず、呼び出された時はいつもひたすら謝っていました。

今思えば、謝るだけでなく、もっと真摯にAさんと向き合っていればよかったのかもしれません……。

頭を下げていると、とんでもないことを言い出した

ある日、またメニューを値上げすることになり、いつものようにAさんに呼び出された私。

「また値上げしたのか! これで何度目の値上げだ!?」と怒るAさん。私が頭を下げていると、Aさんはとんでもないことを言い出したのです。

「物価が上がっているのを言い訳に、値上げして得た利益をそのままオーナーやあんたが貰ってるんじゃないか? 個人店だからそれくらい簡単にできるだろう?」

もちろんそんなことはしていませんし、オーナーも私も苦渋の決断として値上げをしているのです。

あまりの言い様に、悔しくて涙が込み上げてきたその時。他の常連のお客様がAさんに「そんな酷いことを言うくらい値上げに不満を持っているなら、もう来なければいい」とピシャリ。

Aさんは怒って帰っていき、その後お店にくることは無くなってしまいました。Aさんの苦情を聞かずに済むのでホッとしている部分もありますが、やはり長年の常連さんが来なくなるのは寂しいものです。

いつか、Aさんが値上げに納得した時に、また来店してほしいと思っています。

【体験者:50代・女性飲食店勤務、回答時期:2024年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Hinano.N
不動産・金融関係のキャリアから、同ジャンルにまつわるエピソードを取材し、執筆するコラムニストに転身。特に様々な背景を持ち、金融投資をする女性の取材を得意としており、またその分野の女性の美容意識にも関心を持ち、日々インタビューを重ね、記事を執筆中。