職場の階段で……
Oさんは当時、運送会社で事務の仕事をしていました。
普段はさほど忙しくなく、従業員ものんびりとしている職場ですが、繁忙期になると昼食をとる暇もないほど慌ただしく業務をこなさなければならないこともあります。
その日はちょうど繁忙期で、誰もが慌ただしく仕事をしていました。
「きゃっ!」
急ぎの仕事を頼まれたOさんが上の階のオフィスに行こうと階段を上っていると、ちょうど降りてきた同じ部署の先輩がぶつかってきました。その拍子に、Oさんは階段を数段、落ちてしまったのです。
「いたたた…… 」
「ごめん、大丈夫?」
「ちょっとやばいかもです…… 」
どうやら足首をくじいたようで、Oさんは立ち上がることもできずにうずくまってしまいました。
先輩が叫んだ理由とは
ぶつかってきた先輩はOさんの様子を見て、真っ青な顔で叫びました。
「何、ケガしたの!? やめてよ、あんたに休まれたら明日から私が休みとれないじゃん!」
Oさんはいきなり大声を出した先輩に驚き、何も言い返せません。
「旅行楽しみにしてるんだから、テーピングでもなんでもして、我慢して働いてよね!」
そっちがぶつかってきたせいでケガをしたのに……。ありえないと思いましたが、先輩ということもあり何も言えないOさん。
すると階段の上から、ひとりの男性の声が響いてきました。
「へえ、明日からの休暇、旅行なんだ? 遠方の親戚の法事だって聞いたけど。まあ楽しんできて」先輩と2人で声のした方を見上げると、先輩とOさんの上司があきれ顔で覗いていました。
「で、足は大丈夫?」
「は、はい……」
幸いにもOさんのケガは大したことがなく、湿布を貼ればすぐに痛みは治まりました。
そして先輩は無事に休みを取れたものの、嘘をついて繁忙期に休暇を取ったということで、肩身が狭そうな様子。
休み明けにはOさんに特別にお土産を渡してきたそうです。
休暇をとるのは自由ですが、嘘をついて休みをもらうのはよくありませんね。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。