長男である夫にとても厳しいしつけをしてきた義父が、子育てを終えて何を感じ行動したのでしょうか。今回はA子から話を聞きました。
長男の夫にだけ厳しい義父
私の夫は、姉と弟を持つ3人姉弟の長男です。
夫の両親、特に義父は夫に厳しく接してきました。
幼いころ、夫の姉弟が義父に甘えたり抱っこをねだったりしても、夫は義父のことが怖くて近寄れず、同じようにできなかったそうです。
義父の厳しいしつけのもと「長男は姉弟の手本であるべき存在」と小さいころから言い聞かされて育ちました。
たとえば、食事のマナーや早寝早起きについても徹底的に指導され、少しでも箸の持ち方が悪ければ手を叩かれることもあったと言います。
また、姉弟喧嘩が起きると、たとえ夫に非がなくても「長男だから」という理由で一方的に叱られることが多かったとか。
夫は、そんな義父の厳しいしつけを受けて大人になっていったのです。
まるで別人!? 厳しい父が激甘じぃじに!!
その後成長し、結婚して今の家庭を築いた夫ですが、彼の中には長男としての重圧や厳しいしつけの記憶がずっと残っていました。
やがて、私たちは男の子を授かりました。
つまり義父にとっての初孫が誕生したのです。
そのころから、義父に驚くような変化が起きました。
それは、夫から聞いていた昔の義父の態度とは真逆で、とても信じがたい光景。
義父は孫を抱っこし、肩車までして、まるで別人のように愛情を注いでいるのです。
さらには、4歳になった今も孫にお菓子やおもちゃを惜しみなく与え、どれだけ騒いでも決して怒ることはありません。
食事中のマナーにも寛容で、夫が幼いころには叱られていたような箸の使い方をしていても義父は微笑むだけ。
私は夫に
「信じられないほど甘いんですけど」
と戸惑い気味に語り、夫も
「父さん、変わったなぁ」
と、目を丸くするばかりでした。
義父の後悔
ある日、私が「お義父さん、孫に甘すぎるかも」と義母に話をした際、夫が知らなかった義父の胸の内を語ってくれました。
義母によれば、義父は長男である夫に対して厳しすぎたことを心のどこかで悔やんでいたそう。
「もっと優しく接してあげられたはずなのに、自分は無理をさせすぎたのかもしれない」と感じ、ずっと後悔の念を抱えていたのだとか。
そして、息子が家庭を持ち、孫が生まれたことで、「今度こそは」とその後悔を埋めるように孫に精一杯の愛情を注いでいるというのです。
夫の本音
この話を夫にすると、
「厳しく育てられたけれど、時代もあったと思う。両親の愛情は確かに感じていたよ。自分が子どもを持って、ようやく親の気持ちがわかる気がする」
としみじみ語ってくれました。
今では、孫を溺愛する義父の姿に少し苦笑しつつも、その変わりようを温かく見守る夫。
そんな夫と義父の様子をそばで見て、私は「子育てで、人はいつでも変わるものだな」と改めて感じています。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。