筆者の友人・A子は、幼い頃から親に差別されて育ちました。我が子には自分のような思いは絶対にさせないと心に誓っていたA子ですが、ある時、自分の決心が揺らいでしまいます。A子が未だに後悔している子育ての課題とは──?

差別&無関心

私は小さい頃、親から差別をされて育ちました。
3歳下の弟を溺愛する両親、あからさまに私を邪魔者扱いする祖父母。
弟は「後継ぎ」として、何でも許される状況にありました。
その一方、私は幼いときから「女はいらない」「かわいくない」などと言われ続けて育ったのです。

やがて弟は、徐々に私に対してマウントを取るようになっていきました。
自分の方が可愛がられていることを自慢したり、差別されている私をバカにしたり。
私はそんな環境から逃れたくて、就職と同時に家を出ることにしました。

その後、現在の夫と出会い結婚。
私の結婚にも両親や弟は無関心で、結婚式にすら参加しなかったのです。

反抗期

私たち夫婦には2人の子どもがいます。
長女はしっかり者の努力家で、長男は甘え上手。
実家と同じ家族構成になったとき、私は自分のような思いを絶対にさせてはいけないと心に決めて、子育てをしていました。

異変が起きたのは、長女が中学生になった頃。
反抗期を迎えた娘は、とにかく私に当たることが多く、「うるせぇ! ばばぁ!」「ほっとけよ!」など、悪態の限りを尽くしていました。
その頃、長男は小学生。
荒れる姉を見て「お母さん、大丈夫?」と心配をしてくれるようになり、私の中では自然と長女を疎んじる気持ちが芽生え、長男の方が可愛いという感情が生まれてしまったのです。

独立

長女の反抗期は高校入学前に収まりましたが、私は自分の中に生まれた気持ちを変えることができずにいました。
長女が大学に進学することになったとき、長女は「一人暮らしをしたい」と言い出しました。

私は離れて暮らせることに内心ほっとして快諾。
すると長女がいきなり「ねぇ、お母さんってK輔(長男)の方が可愛いよね?」と話しかけてきました。
突然のことに私が驚いていると「私の反抗期のせい? K輔はあんまり反抗期ひどくないもんね。私もひどいことばっかり言ってたのは覚えてるけど、何となくお母さんに嫌われてる気がして、どうしても素直になれなかったんだよ」と言ったのです。

後悔

私は、自分が『親に嫌われている』と悩んで過ごした子ども時代を思い出しました。
絶対こんな親にはならない、子どもに自分と同じ思いはさせないと誓ったはずなのに、長女に同じ思いをさせていたことに気が付いたのです。

私は自分の幼少期のことや、長女に対して思っていたことを打ち明けました。
長女は話を聞いて「私も悪かったよね、ごめんね」と謝ってくれたのですが、私は今でも長女から少し距離を置かれている気がしています。

自業自得ではあるのですが、人は自分が育てられたようにしか育てられないのだろうかと悩み続ける毎日です。

【体験者:40代女性・パート、回答時期:2024年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。