冗談かと思ったら
夫は年の離れたU子をとてもかわいがっていて、結婚後も彼女が頻繁に遊びに来るのを「一人暮らしで寂しいんだよ」と言って気にも留めません。しかし、最初は大人しかったU子に徐々に変化が……。
ある日、「この食器かわいい! 私もこういうの欲しいなっ」と言い出したU子。その時は冗談だと思い聞き流しました。しかしその翌週には、玄関に入るなり「この日傘いいなあ、もらってもいい?」と聞いてきたんです。私は「冗談じゃ無かったんだ」と驚きました。
エスカレートするおねだり
徐々にU子のおねだりはエスカレートしていきました。夫が甘やかすせいで、ますます図々しくなるU子。そのうち、家に来ると真っ先に部屋の中を物色するようになりました。
遊びに来てるのか、物をたかりにきてるのか。常に何かを持ち帰ろうとするU子。そしていつの間にか、家具や家電などの高価な物を狙うように……。
「この美顔器、あんまり使ってないでしょ。貰ってあげようか?」と言い出したU子。その背中を押すように「使ってないならあげれば?」と軽い返事の夫。「私、普通に使ってるんだけど!」と夫に説教するも「あいつも悪気はないんだよ」と逃げ出す始末。
それからも調子に乗ったU子の要求は続いていき、私は限界寸前でした。
母の形見のミシンをねだられ、我慢の限界!
そしてついに、我慢の限界を迎える日が来ました。いつものように部屋を物色した後、私の母の形見であるミシンに狙いを定めたU子。「このミシン、気になってたんだよね。どうせ使わないでしょ?」と言ったのです。
私は怒りに震えながら「もう無理、耐えられない」と呟き、フラフラと立ち上がりました。そしてU子に向かって「いい加減にしてよ! 使うか使わないかは私が決める!」と叫びました。
夫はあっけにとられ、ポカーンとした顔で私を見上げています。私は夫を睨みつけ、「このミシンが私のお母さんの形見だって、あなたは知ってるよね? なんで何も言ってくれないの?」と、夫に訴えました。その途端、堪えていた涙が溢れ出してきます。
私は泣きながら玄関を指さし、「まるで追い剥ぎだよ! お願いだから帰って、もう二度と来ないで!」とU子を追い出しました。
その後、夫と何度も話し合いました。U子を甘やかしすぎていたことを自覚し、しっかりと反省した夫。ここは私たちの家であり、きちんと境界線を引くべきだと分かってくれたようです。
本当にU子に悪気はなかったのかもしれませんが、それからはU子が家に来ることはなくなり、ようやく我が家にも平和が戻りました。
【体験者:40代・主婦、回答時期:2024年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:N.tamayura
長年勤めたブラック企業を退職し、書くことを仕事にするためライターに転職。在職中に人間関係の脆さを感じた経験から、同世代に向けて生き方のヒントになるような情報を発信すべく、日々リサーチを続けている。