幼少期の苦い思い出
私には2つ上の兄がいます。兄は小さな頃から野球に打ち込んでいて、家族は野球を中心にまわっていました。土日は野球の練習や試合の付き添いに連れていかれ、その間はグラウンドの隅で遊んだりして時間を潰す日々。家族の中でもとくに母親は兄のことばかり可愛がっていて、私にはあまり興味を持ってくれませんでした。小学校から大学まで兄のお世話ばかりで、私はやりたい習い事もさせてもらえず、小学高学年になってからは一人で家で留守番することも多くなりました。
文句を言っても「お兄ちゃんは頑張ってるのに、なんで応援してあげられないの!」と言われるので、自分のことは諦めていました。こんな家から早く出て行きたくて、高校卒業後は就職して実家を離れました。
家庭を持ち再び関わるように
それ以来あまり帰省することもなく家族とは疎遠になっていましたが、結婚して子供を持ってからは、孫を見せてくれと言う親のために実家にも顔を出すようになりました。
兄は大学の頃にケガをして、野球をやめてしまいました。卒業後は地方の会社に就職し、遠方に住んでいます。ずっと面倒をみてきた兄が親元を離れ、親としては寂しいので、私を呼びつけるようになったんだろうなと思います。
過去の出来事を忘れることはできない
母親は昔のことなどなかったかのように私や孫に対して優しくしてくれますが、私の頭の片隅にはずっと、寂しかった記憶がこびりついています。「老後の面倒をみてね」とも言ってきますが、一度も「うん」と返事をしたことはありません。そのときがやってきたら絶対に断るつもりです。母にとっては忘れてしまうくらいの出来事なのかもしれませんが、私は子どものころに味わったあの寂しい記憶が忘れられず、母のお世話をしてあげられるような心境にはなれません。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kato Rira
シナリオライターとして活躍するも、出産と育児を機に、フリーライターに転身。バリキャリから、家庭と仕事の両立への転換を経験し、その思いをコラムに執筆。現在はママ、PTA、職場と家庭のバランスなどを主なテーマにコラムを執筆中。