自分よりも周囲の人のほうが幸せそうに見えて、ついつい僻んでしまったことがあるという人も多いのではないでしょうか。人は自分にないものを羨ましがってしまうものなのかもしれませんね。今回は筆者の友人が自分を見つめ直したエピソードを聞かせてくれました。

密かに抱える劣等感

私は都内の企業で営業職として働く30代の女性です。「結婚したら自由がなくなるじゃん」「子どもなんて騒がしいし、お金かかるし、いいことないよ」と豪語して、独身を謳歌しています。

しかし、実は心のどこかで焦燥感や劣等感を抱いていて、そんなふうに強がることで心の平穏を保とうとしていただけなのかもしれません。ある時、それを思い知る出来事がありました。

地元のショッピングモールで見かけたのは

それは、地元に帰省した時のこと。
周囲は何もない田舎なので、私は街に1つだけの大型ショッピングモールをぶらぶらしていました。
夏休み中ということもあり、館内は家族連ればかり。騒がしい場所を避けて、カフェでゆっくりお茶でもしようかな……と思っていた矢先、フードコートで食事をしている中学時代の友人A子の姿を発見しました。

A子は騒々しいフードコートで、夫とともに幼い子どもに食事を食べさせている最中でした。
その姿を見て、私は心のどこかで「やっぱり子どもがいると、こういう騒がしい場所で食事するしかないのね。親は慌てて食べて、なんか忙しなくて嫌だなぁ」と見下していました。

ついつい心無い言葉をかけてしまい

声をかけると、A子は顔を輝かせて「M美! 帰ってきてたの? 久しぶりだね!」と答えてくれましたが、幸せそうな家庭を築いているA子が不意に羨ましくなってしまい、私はついつい意地悪な言葉をかけてしまいました。

「久しぶり! ここすごく騒がしくない? やっぱり子どもがいるとちゃんとしたお店じゃなくて、こういうところで済ませるしかないんだね。私は絶対無理だな~。落ち着いて食べたいし!」

A子は、私の心無い言葉を笑顔で受け流してくれましたが、私はそのままさっさと立ち去りました。

自分の愚かさが恥ずかしい

その数日後、私はとんでもない事実を知ることになります。

別の友人との食事中に、何気なく「この間A子を見かけたんだけどさ、フードコートで子どもに慌ててごはんを食べさせてて、ちょっと気の毒だったわ」と、さも自分が優雅に過ごしているかのように話すと、友人は驚いた顔でこう言ったのです。

「え? A子は投資で大成功してるんだよ。あのフードコートに行くのも、投資している企業のお店が入ってるから、株主優待券を使うためらしいよ」

私は頭の中が真っ白になりました。勝手に決めつけて、心無い言葉を浴びせていたなんて……。自分の愚かさに、顔から火が出そうな恥ずかしさを感じました。

まとめ

この一件以来、「結婚していない」「子どもがいない」だけで、自分を大きく見せようとするのはやめようと決心しました。周りの人たちの幸せを心から祝福できる人間になりたい! と思い、後日A子にも謝罪。
少しずつですが、誰かと比べない自分だけの幸せを探そうとしています。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。