子どもの習い事の中でも、ピアノは特に大人気ですよね。集中力などが身に着くため、習わせたいと考えている親御さんも多いでしょう。ピアノ教室や音楽教室など、教えてくれるところは多いものの、気になるのはいわゆる月謝。今回は、そんなピアノ教室にまつわるトラブルに遭遇した筆者の知人、Hさんのお話です。

月謝の額にビックリ

そんなある日、ピアノの練習中のHさんを、最近引っ越してきたというご近所さんがいきなり訪ねてきました。
「うちの子にもピアノ教えてほしいの! あなたピアノ上手いって聞いたわよ。でも送り迎えできないから個人レッスンにして!」
小さな子どもを連れてやってきたご近所さんはまだ若い母親で、挨拶もそこそこに同年代のHさんにピアノを教えるよう頼んできます。

Hさんはその人の勢いに押され、とりあえず家に上げました。
「レッスンは別にいいですけど……」
「もちろん月謝は払うわよ! 子どもの教育にはお金を惜しまないから。きっとうちの子才能あると思うんだよねー」
Hさんは期待してくださっている気持ちはありがたいと感じながらも、ピアノ教室の生徒に渡している年齢や回数別の月謝の一覧表を母親に見せました。
「まだ3、4歳ならこれくらいかな」
子どもの年齢に合わせた金額を提示したHさん。ご近所さん向けの教室ということもあり、月5,000円と地域でもかなりお手頃な料金のはずでした。

「えー! 高くない!? ご近所のよしみで、月500円でいいでしょ!」
母親はそう言って500円玉をHさんに握らせました。Hさんはプロとしての技術と時間に対する対価を理解していただけないと判断し、心苦しく思いながらも、丁重にお断りしたそうです。

たとえ親しいご近所付き合いであっても、プロが提供する技術やサービスには、必ず相応の対価が必要であるという大切な原則をHさんに再認識させました。今後、Hさんは身近な人間関係とビジネスの境界線をより明確にし、プロとしての姿勢を崩さないという大きな教訓を得たそうです。

【体験者:20代・女性ピアニスト、回答時期:2024年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。