月謝の額にビックリ
そんなある日、ピアノの練習中のHさんを、最近引っ越してきたというご近所さんがいきなり訪ねてきました。
「うちの子にもピアノ教えてほしいの! あなたピアノ上手いって聞いたわよ。でも送り迎えできないから個人レッスンにして!」
小さな子どもを連れてやってきたご近所さんはまだ若い母親で、挨拶もそこそこに同年代のHさんにピアノを教えるよう頼んできます。
Hさんはその人の勢いに押され、とりあえず家に上げました。
「レッスンは別にいいですけど……」
「もちろん月謝は払うわよ! 子どもの教育にはお金を惜しまないから。きっとうちの子才能あると思うんだよねー」
Hさんは若干引きつつも、ピアノ教室の生徒に渡している年齢や回数別の月謝の一覧表を母親に見せました。
「まだ3、4歳ならこれくらいかな」
子どもの年齢に合わせた金額を提示したHさん。ご近所さん向けのピアノ教室であるため、5,000円とかなりお手頃な料金のはずでした。
「えー! 高くない!? ご近所のよしみで、月500円でいいでしょ!」
母親はそう言って500円玉をHさんに握らせました。もちろんHさんは丁重にお断りしたそうです。
ピアノという相当な練習量や苦労を積んで得た技術を教えてもらうのですから、さすがに500円は安すぎますよね。
【体験者:20代・女性ピアニスト、回答時期:2024年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。