家や家族を大事にすることは大切ですが、自分の価値観を相手に押し付けることは避けたいもの。これは筆者の友人・T子のエピソード。家長制度を大事にする義母に頭を悩ませるT子一家の出した答えとは──?

跡取り

私は20代で結婚・離婚を経験し、30代で同じバツイチの男性と再婚しました。
2人とも離婚の理由は、子どもに恵まれなかったこと。
再婚後に一度流産してしまいましたが、その後息子のY太を授かることができました。
再婚して子宝に恵まれたことで、私も夫もとても喜んでいたのです。

喜んだのは私たちだけではなく、義母も同じ。
「これで跡取りができたわ♡」と大喜びでした。
息子が生まれてからというもの、義母はどこへ行っても「うちの跡取りなのよ♡」「これで安泰だわぁ♪」と跡取りアピール全開!
私に対しても「うちの跡取りなんだからしっかり育てるのよ!」と圧力をかけてくるようになりました。

閉口

義母の跡取りフィーバーはY太が大きくなってからさらに加速。
お墓のことや自分たちの介護のことまで、夫とY太に「跡取りなんだから、あなたたちにお願いするわね!」とハッキリと言うようになっていったのです。

これには夫もY太も閉口。
夫は見かねて「おばあちゃんの言ってることは気にしなくて良いからな。」と言ってはいたものの、Y太はだんだんと義母に会うのを嫌がるようになってしまいました。

反論

Y太は、高校を卒業後、東京で一人暮らしをしながら大学に通うことになりました。
これに反対したのは義母。
「東京なんか行って、何かあったらどうするの!」
「あなたはうちの跡取りなんだから、地元にいればいいのよ!」とこれまた大騒ぎ。

しかし、そんな義母の様子を見ていたY太は、冷めた顔で「ねぇ、それもういい加減にやめてくれない? 俺まだ18なんだけど。」と初めて反論しました。
Y太の態度に義母は激怒したのですが、「そうやって自分の思い通りにならないからって怒るのは大人気ないよ。親父ときちんと相談して決めるから、今からそうやって騒がないで。」と言われてションボリ……何も言えなくなってしまいました。
確かに、Y太が生まれたときも、「おめでとう」より「跡取りができた」が先だった義母。
気持ちはわからないでもないですが、あまりにも押しつけがましいことを言い続けたせいで‟大事な跡取り”であるY太から疎まれてしまったのです。

懲りない人

大学卒業後、Y太は他県で就職。
連休などには実家に帰ってきますが、義母は「うちに顔を出させなさい! 跡取りなんだから!」と懲りずに騒いでいます。

夫もY太も、決して義母の言っていることを否定しているわけではないんです。
ただ、顔を合わせるたびに「跡取り」ということばかり言われ続けていたので、きっと押しつけがましく感じてしまったのでしょう。

子ども・孫といえども、祖父母や両親の所有物ではありません。
義母にも悪気はないのでしょうが、Y太の自主性をもう少し尊重してほしいなと思っています。

【体験者:50代女性・パート、回答時期:2024年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。