投資の世界には「損切り」という言葉があります。損失を減らすために手放す行為ですが、その考えを人間関係に持ち込んで縁切りを行う人もいるようです。今回は、専業主婦の妻を抱えるのは損だと「損切り」、つまり離婚を突きつけた夫のエピソードを知人から聞きました。

専業主婦の妻は夫の足かせ?

A子は出産後、仕事を辞めて専業主婦をしていました。
その理由は、夫のB男は仕事が忙しく、家事や育児に加わることができなかったから。
B男も出産前は専業主婦になることを了承していましたが、次第に不満を漏らすようになりました。

「自分ばかり頑張っている」
「A子は自分に負担を押し付けて楽をしている」

そう考えたB男は、「専業主婦の妻は、俺の人生の足かせになっている。マイナスの存在でしかないA子を、損切りしたい」と、離婚を突きつけたのです。

離婚を損切りと表現した夫

投資では、値下がりしたときに損失を最小限にするために売却することを『損切り』と言います。
投資をしていたB男はそれに見立てて、A子を切り捨てようとしたのです。

B男の無神経な発言に、A子は静かにキレました。
幼い子どもを育てながら家事もこなしていたA子の毎日は、決して楽なものではありません。
自分のための時間もとれず、孤独感も抱えていました。
B男は「自分に負担を押し付けている」と言っていましたが、彼は家事や育児の負担を免れています。

『こんな自分勝手な人と家族としてやっていく自信がない』
そう考えたA子は、着々と準備を進めて離婚を決断しました。

離婚後、夫は?

元々医療系の資格職だったA子は、優良な職場に就職できました。
待遇もよく、子育て支援も充実しています。
また、A子の両親も子育てに協力してくれたため、A子は離婚前よりも生き生きとした生活が送れるようになったのです。

このことを知ったB男は惜しくなったのか、A子に復縁を求めました。
A子はこの申し出を「ありえない!」と、きっぱりと拒否したそうです。

損切りした後に値上がりすることは、投資では「あるある」です。
投資ならまた買い直して保有すればいいけれど、人間はそうはいきません。
B男は人間関係で損得勘定を働かせたことで、“人生の大損”をしてしまったのです。

【体験者:30代女性・会社員、回答時期:2024年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:江田愉子
団体職員を経て、ライターに転身。男性が管理職、女性多数が一般職の職場にて、女性と仕事、男女平等参画に関する様々な理想と現実に直面し、それを記事にすることを志す。以来、組織に所属する女性を中心にヒアリングを重ね、女性が生きやすい社会生活に関するコラムを執筆中。