美容院やネイルサロンなどでは、予約した時間に遅刻すると自分の希望する施術が受けられないことがあります。そのためいつも予約時間より少し早めに着くようにしている人も多いのでは? 今回はそんな予約時間に関する、お客様の驚きの行動を目の当たりにした筆者の知人、Tさんのお話です。

スタッフの少ない美容院

Tさんは当時、自分を含めてスタイリストが2名という、小さな美容院を経営していました。

アシスタントもいないのでお客様を受付、シャンプーから会計まで担当するシステムです。

ある日Tさんが常連客のカットとカラーをしていると、ほかのスタイリストのお客様が予約に30分遅れてきました。
「すみません、時間が足りないので今回はカットのみになります」
どうやらそのお客様はカットとカラーの予約をしていたらしいのですが、30分も遅れられると次のお客様を待たせることになってしまうから今回はカラーまでできない、という旨を丁寧に説明していました。

「え、どうしてできないの? 今日カラーしてもらわないと困るんだけど!」
「申し訳ございません、さすがに30分遅刻されると……」
「何よ、私が悪いっていうの!? なんて失礼な店なの」
お客様がかなり無茶な注文をしているため、Tさんがそのスタイリストに助け舟を出そうとしましたが、そのお客様はぷりぷりと怒りながらそのまま帰ってしまいました。

常連客の気遣いが……

「大変だったわね、自分が遅刻したのが悪いのに」
Tさんが担当している常連さんはそう言って、もうひとりのスタイリストをなぐさめてくれました。
「うちみたいに小さい店は結構ギチギチに予約を入れてるので、遅刻されると本当に困っちゃうんですよね」
Tさんが呟いた言葉に、常連客は大きくうなずきました。

するとその常連さんは次回から、予約の時間の1時間前に来るようになってしまったのです。
「ほら、こないだ急に遅刻でキャンセルとかあったじゃない? だから絶対遅刻しないように早めに来たのよ」
どうやら予約の時間をギチギチに入れていると聞いて、前のお客様がキャンセルしたり、施術が予定より早く終わったりして時間が前倒しになってもいいように気遣ってくれたのでしょう。

しかしなにぶんスタッフが少ない店なので、お客様の予約が予定通りの場合はきっちり1時間その常連客を待たせてしまうことになります。
「お気持ちは嬉しいのですが……」
さすがに1時間放置するのは気が引けるので、時間通りに来て欲しいと伝えたとのことです。

いいお客様ですが、さすがに1時間前は早すぎますね。待たせてしまっていると思うとプレッシャーになりそうです。

【体験者:40代・女性美容師、回答時期:2024年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。