介護の現場では毎日思いがけないハプニングが起こり、人と接することの複雑さや奥深さを改めて実感すると介護経験者に聞いたことがあります。今回は介護施設に入所している女性たちが皆ニコニコとご機嫌になったある出来事に遭遇した経験のある筆者の知人、Mさんのお話です。

面会にきたお孫さん

Mさんは当時サービス付き高齢者向け住宅で、介護スタッフとして勤務していました。

ある日ひとりの女性入所者さんのもとに、お孫さんが面会にやってきました。
「わあ、キレイねえ」
談話スペースに、入所者さんの楽しそうな声が響いたのでMさんは何かと思い、見に行ってみました。

「見て、Mさん」
その入所者さんはMさんに両手の爪を見せてくれたのです。
「あら、ほんとにキレイ」
入所者さんの両手の爪には淡いピンク色のマニキュアが施されていました。
「私、ネイリストなんです」
お孫さんはマニキュアの瓶を何本かMさんに見せました。それは剥がせるタイプのマニキュアで、除光液を使わずに落とすことができるというものでした。