孫差別をするおばあちゃん
これは先日、母親と話していて『こんなこともあったな』と思い出したのですが、私が小学校低学年のころのお話です。
私の父方の祖母は、男尊女卑な考えを持っている人でした。
私には同じ歳の男の子のいとこがいたのですが、祖母はいとこばかりかわいがり、あからさまに孫差別をしていました。
『いとこだけにプレゼントをあげる』『ご飯はいとこの好物ばかり』などが当たり前で、まだ小学校低学年の私でもはっきり『差別されている』とわかるものでした。
父や親戚の人が何度かとがめたものの、祖母にとっては当然のことだと言わんばかりで、孫差別は続いていました。
抹茶とバニラのアイス
ある日おばあちゃんの家で食事をしたときのことです。
おばあちゃんが
「デザートにアイスがあるよ。みんな、抹茶とバニラどっちがいい?」と聞いてきました。
いとこは『抹茶が好きで、バニラが嫌い』、
私はその逆で、『バニラが好きで、抹茶が嫌い』でした。
そのため、「じゃあ抹茶とバニラ半分ずつにしよう」ということになりました。
ところが。
「おまたせー」
おばあちゃんが持ってきたのは、すべて抹茶のアイスでした。
「大丈夫だよ、だって……」
この状況に父たちが、
「おい、抹茶しかないじゃないか。この子はバニラしか食べられないって、さっき話していただろう」と指摘するも、おばあちゃんは、
「そんなこと言ってたっけ?」と、バレバレなのに、しらばっくれます。
そのとき私が思わぬことを言い出したそうです。
私「大丈夫だよ。だって私の本当のおばあちゃんじゃないんだから、仕方ないよ」
みんな「どういうこと?」という空気になりました。
ニセモノだと思われていたおばあちゃん
このときの私は、日々のあからさまな差別から『きっと自分のおばあちゃんではなく、いとこくんのおばあちゃんなんだ!』と思い込んでいたのです。
ちなみに母方の祖母がとても優しいので、そちらが本物だと思っていました。そのためこのような孫差別も、特になにも感じていませんでした。
この小さな子独特の発想を聞いて、大人たちは
「そうだよな、本当なら優しいはずだもんな。ニセモノのおばあちゃんだ!」と笑っていたそうです。
おばあちゃんにも何か理由があって男孫だけを可愛がっていたのかもしれませんが、さすがに『本当のおばあちゃんじゃない』と言われたのは複雑だったようで、なんともいえない顔をして黙っていたそうでした。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:橘るい