習い事の人気者
Sさんはいつも明るく、誰に対しても気さくで親切に接するため、気づけば周りに人が集まってくるいわゆる陽キャの主婦。
3ヶ月ほどの期間限定で開催された習い事の教室でも、男女問わず皆に好かれていました。
「もうすぐこの教室も終わりだし、最後の日に打ち上げしない?」
Sさんは大勢でワイワイ集まるのが好きなので、習い事の教室で特に仲の良いメンバーに打ち上げの提案をしました。
「いいね! やろうやろう!」
メンバーたちも乗り気だったため、同じ習い事の参加者全員を誘い、最終日に居酒屋の大きな部屋を予約して打ち上げを開催することになりました。
「俺が幹事をするから、予約は任せてくれて大丈夫だよ」
「ほんと? ありがとう!」
Sさんと仲の良いメンバーの一員で、バツイチで超イケメンの男性が幹事を務めてくれることになり、Sさんは打ち上げをとても楽しみにしていたのでした。
打ち上げの当日
そしていよいよ習い事は最終日を迎え、皆一旦解散して打ち上げ会場で集まる予定になっていました。
「あの、Sさんちょっといいですか?」
一旦家に帰ろうと思っていたSさんは、同じ教室のRさんという女性に声をかけられました。
「どうしたの?」
Rさんはおとなしい雰囲気の独身女性で、Sさんと特別に仲が良いわけではありませんでしたが、顔を合わせれば少し会話する程度です。
「実は誰にも話せない悩みがあって、ちょっと相談に乗って欲しくて……」
Rさんが深刻そうな顔をしていたため、Sさんはますます気になってしまいました。
「いいよ、今からお茶でもしようか?」
Sさんがそう言うと、Rさんは「打ち上げの前に早めに集合して話したい」と答えたため、Sさんはそれを快諾しました。
「打ち上げが18時からだから、17時くらいでいいかな?」
「はい、場所は〇〇でお願いします。必ず行きますので、遅れても待っていてくださいね」
「わ、わかった……」
待ちぼうけをくらわされ……
「あれ? なかなか来ないな……」
SさんはRさんに指定されたビルの地下にある飲食店で待っていましたが、約束の時間になってもRさんは現れません。
それでも「必ず行きます」と言われた手前、待つしかないと思ってずっと待っていました。
「あれ? ここ電波ないじゃん」
Rさんに連絡をしようと携帯電話を取りだすと、なんとそのお店は圏外で、メールも電話もできません。
「仕方ない、待つか……」
結局Sさんはその店の閉店時間である21時まで待っていましたが、Rさんは姿を現しませんでした。打ち上げにも参加できず、Rさんとも会えないという状況に、ただ落ち込むばかりのSさん。
「打ち上げ行きたかったなあ」
Sさんはしょんぼりと肩を落とし、電波の通じる屋外へ出ました。Rさんに電話をかけてみるも、全く繋がりません。
「ん?」
突然Sさんの携帯電話に、仲良しメンバーのひとりの女性から電話がかかってきました。
「もしもし……」
「あ、Sちゃん? どうして打ち上げ来なかったの? 電話しても繋がらないし……」
それは打ち上げに来なかったSさんを心配する電話でした。
相談女の策略とは
「実はさあ……」
打ち上げに参加できなかった理由を聞かれたため、SさんはRさんに呼び出されたのにすっぽかされたという事情をその女性に伝えました。
「え、Rさん? 元気に打ち上げ来てたけど」
「ええー!?」
Sさんは驚きのあまり、電話を落としそうになりました。