無視された理由は
「どうして無視するんだろう……」
バス停で無視されるようになってから、Eさんは子どもを自転車や車で幼稚園に送るようにしました。
一体どうして無視されているのかはわかりません。せっかくママ友ができると思ったのに、とEさんは落ち込むばかりでした。
バス停ママたちと顔を合わせないよう、早めに家を出たEさんがエレベーターに乗ると、同じ幼稚園の制服を着た子どもを連れた女性がすでにエレベーターに乗っていました。
「あ、おはようございます」
「おはようございます」
上から来たエレベーターに乗っていたということは、おそらく最上階に住んでいる女性です。
Eさんが住んでいるマンションは階数が上になるほど値段が高く、最上階は特に高級で、部屋数が少なくひとつひとつの部屋が広い造りになっています。
「あの、同じ幼稚園ですよね。バス停で嫌なことありませんでした?」
最上階の女性がEさんに尋ねました。
「はい、何故か無視されて……」
「やっぱり」
話を聞いてみると、やはりその女性もバス停で無視されて自分で幼稚園まで送ることにしたそうでした。
「あのバス停にいる人たち、みんな10階から下に住んでるんですよ。それで、10階以上の人が来たら無視するの。ここって10階以上は結構値段が高かったでしょ? ひがんでるのよ」
「え、階数で人を差別するんですか?」
「そう、幼稚園のママは低層階の人が多いから、向こうは数で勝負してるの」
マンションの階数で人を差別するなど、タワマンだけの話だと思っていたEさんはびっくり。こんなに普通のマンションでもそんなことがあるなんて思いもしませんでした。
「しかも低い方が無視するって、逆マウントだよね」
最上階の女性はそう言って笑いました。
「10階以上に住んでるママが集まってる場所があるから来ない?」
「行きます!」
10階以上のママが集まっている場所に案内され、Eさんは無事にそこでママ友を作ることができました。
なおバス停のママたちは子どもを見送った後もバス停でずっと立ち話をしていたため、他の住民から幼稚園にクレームが入り、バス停がマンションの前から少し離れた場所に移動になったそうです。
マンションの階数で逆マウントをとるとは。羨ましい気持ちもわかりますが、それが人を無視していい理由にはなりません。人はどんなところでマウントを取られるかわかりませんね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子