数年前に90代で亡くなった筆者の祖母の話です。祖母はプライドが高く、親切なデイサービスの職員さん泣かせの利用者でした。それでも職員さんの根気強い関わりと、プロフェッショナルな対応で、頑固な祖母がどんどん変わっていき……? 素敵なデイサービスのお話をご紹介します。
デイサービスで「あれもこれも嫌」
私の90代の祖母。早くに両親を亡くし、シングルの祖母に育てられた彼女は、とてもプライドの高い女性でした。
書道の腕前は師範級。当時小学生だった私に教わり、ローマ字も習得する向上心豊かな人でした。
そんな彼女がデイサービスに通うことに。
普通は入浴介助を受け、他の時間はおやつを食べたり、塗り絵をしたりして過ごします。
ところが「人にお風呂に入れてもらうなんて考えられない!」と入浴は断り、
「子ども扱いしないでほしい」と塗り絵や積み木のような作業も嫌がりました。
職員さんは優しく声を掛けて下さっていただろうに、嫌なことは嫌! とはっきり自己主張します。
孫の私は、「うまくやっていけるだろうか……」と心配して見守っていました。
宿題まで持って帰ってくるように……?
そのうち、「今日はね、こんなプリントをしてたのよ」
と、帰宅後に、うれしそうに課題を見せてくれるようになりました。
難解漢字の問題集や、日本の地名の問題集のプリントなど。
中学生や高校生レベルのものもあります。
宿題までどっさり与えられて、祖母は嬉々として、辞書とにらめっこしながら頑張っていました。
煮詰まると、「ここがね、調べてもわからない」と私に教えを乞うようにもなりました。
元教員の私には「教えて」が素直に言える、かわいらしい人でもありました。
実はその頃から認知症の症状も出ていたのですが、それは絶対に自分で認めませんでした。
体が不自由になり、家では1人でお風呂に入ることも難しくなっていました。
そんな時は、ただ1人、実の息子の父だけに介助を許し、お風呂に入れてもらっていました。