人の物を盗むことは、立派な犯罪。どんな理由があろうと、やってはいけないことがあります。しかし物事の善悪がわからない人は、罪を犯したのにとんでもない言い訳をすることも……。これは筆者の勤務していた会社で実際に起きた『窃盗被害』のお話です。

年末の大事件

私が以前、保険会社に勤務していたときのお話です。
社内でお財布がなくなるという事件が起きました。
被害者は私の隣の席の先輩・F。年末年始用に銀行からまとまったお金をおろした後に、社内で仕事をしていたところお財布がなくなったというのです。

少しだけ離席した時間があったものの、会社に着いたときに飲み物を買ったので、お財布は落としたわけではないとのこと。

その後、警備員の人が中身が抜き取られた財布をトイレで発見。
窃盗事件だと、社内は大騒ぎになりました。

警察はダメ?

騒ぎを聞きつけた上司が、私たちの部署へやって来ました。
F先輩は上司に呼ばれ、「警察には届けないでほしい。社内で対応したい」と言われたそうです。

理由は『信用が第一の保険会社だから』……。現金を扱うこともある保険会社内で、お財布の盗難があったと公にするわけにはいかないとのこと。

第三者は入れないシステムになっているので、犯人は同じ社内の人間であることも想像できました。事が大きくならないように、上層部は独自に調査すると決めたのです。

犯人は……

防犯カメラの映像や、お財布が盗まれた時間帯の在席状況などを調べていくと、F先輩の向かい側にいたMが怪しいということになりました。

私たち社員は防犯カメラの映像は見ていませんが、どうやら揺るぎない証拠だったらしく、Mは上層部に呼び出されました。

最初は否定していたものの、防犯カメラの映像で観念し、窃盗を認めたのです。