お誕生日パーティーに招待
Sさんは当時小学生の娘さんのために、誕生日パーティーを計画していました。
娘と2人で招待状を作り、親しい人に配ったり、当日のお料理は何がいいかと話し合ったり。
「お誕生日が楽しみだね、ママ!」
「みんなで楽しくお祝いしようね。あ、お友達にアレルギーがないか、ママが聞いておくわね」
Sさんは娘さんが招待状を渡した友人の家に電話をかけ、食べ物のアレルギーがないかを確認しました。
数人聞いたところで、次に電話をかけたのはTさんという、娘さんの親しい友人の家でした。
「お誕生日会のことなんですが、何かアレルギーはありますか? みんなに楽しんで欲しいので、食べられないものがあればできるだけ避けるようにしたいんです」
「ああ。ご招待ありがとうございます。うちの子はアレルギーはないんだけど、ちょっと食べ物にこだわりがあって」
「どのようなこだわりでしょうか?」
「うちは食品添加物の入ったものは、一切子どもに食べさせてないの!」
それを聞いたSさんは、そういえば他の子どもの誕生日会に娘さんが招待された時、「お母さんにダメって言われてるから」と言って食事に何も手をつけない子がいたと聞いたのを思い出しました。
メニューにダメ出しされて
「ちなみに、食事のメニューはどのような? ケーキはどこの店?」
Tさんにそう聞かれ、Sさんは用意しようと思っている食事のメニューと、誕生日ケーキを注文した店を伝えました。
「うーん、そのお店のケーキは添加物が多いから……食事もちょっと不安なものばかりだし、うちの子には食べさせないでもらえる?」
「はあ」
食事もケーキも食べられない誕生日会なんてつまらないだろうなあ、と思いつつも、娘がどうしてもTさんの子を呼びたいなら仕方ないとSさんは思いました。
「極力添加物を使わないようにしますので、せめて食事くらいは食べさせても良いですか?」
「いえいえ、うちで食べさせてから行かせるのでー」
きっぱりと断られ、SさんはなんとなくTさんの子を不憫に思いながら電話を切りました
誕生日パーティー当日
「お誕生日おめでとう!」
誕生日当日、パーティーには娘の友だちがたくさん集まってくれました。
料理は各自好きなものをよそうビュッフェスタイルにしたため子どもたちはワイワイとフライドチキンやポテトフライ、ハンバーグなどを口にしていました。
しかしその中に1人だけ、何もドレッシングをかけていない生野菜だけを少し口に運んでいる少女がいました。
それは間違いなくTさんの子で、皆がはしゃいでいる中なんとなく寂しそうで、居心地が悪そうな様子でした。