今回は人当たりが良くて優しい人の意外すぎる一面を知ってしまった、私の知人Nさんのお話です。
バイト先の飲み会
Nさんは当時、映画館のポップコーン売り場でアルバイトをしていました。
その映画館はいわゆるシネコンと呼ばれる大きな劇場で、スタッフはチケット売り場、ポップコーン売り場、チケットのもぎり、グッズ売り場、映写係という5つの部署に分けて配属されていました。
他の部署のスタッフと話せるのは休憩室か、3ヶ月に1回開催される映画館全体の飲み会くらいでした。若い男女が集まっているだけあって、映画館の中でカップルが誕生することも珍しくありません。
「ねえねえ、あの映写係のFさんってかなりイケメンじゃない?」
ある日、映画館の飲み会に参加したNさんは、隣りに座っている同じポップコーン売り場の友人に耳打ちされました。
「え、Fさんってどの人?」
「ほら、あの端っこにいる人」
同じフロアで働くチケット売り場やもぎりのスタッフとは違い、映写係のスタッフとはほぼ顔を合わせることがないため、NさんがFさんという人を認識したのは初めてでした。
イケメン発見!
そのFさんを見てみると、色白でスリムなイケメン。Nさんは急に胸がどきどきするのを感じました。
「ねえ、話しかけに行こうよ!」
Nさんは友人の手をとり、Fさんの元へ行きました。幸い飲み会は移動自由で、トイレに立っている間に自分の席がなくなるのはよくあること。
Fさんは会場の隅で同じ映写係の人と話していましたが、タイミングよく隣りの人が席を立ったため、Nさんと友人はそのスキマに滑り込むことができました。
「話すの初めてですよね! 私たちポップコーン売り場担当なんですー」
「そうなんだ? はじめましてだね」
Fさんは2人の女性に挟まれて少し戸惑ったようでしたが、にっこりと笑顔を浮かべてNさんたちを歓迎してくれました。
FさんはNさんよりも3つ年上の25歳で、趣味はバイク。映画館には最近入ったばかりとのこと。控えめに自分のことを話す、穏やかで優し気な話し方で、とっても素敵な男性でした。
「Nさんって、目がキレイだね」
FさんはそういってNさんの瞳をのぞき込み、照れたように笑いました。その笑顔はなんとも人を惹きつける魅力に満ちていて、Nさんは一気に胸が高鳴るのを感じました。