初秋に試したい！ 大人女性に似合う、新感覚の「スリット & シアー」

意外なスポットで上品な素肌見せ

「スリットはボトムスの裾」はもう古い常識です。今は意外なポジションに切れ込ませる新発想スリットが増えています。たとえばトップス袖の内側。風通しがよくなり、さわやかに過ごせます。

ハイストレッチダンボールブラウスは深めのVネックが印象的なプルオーバーです。フレア袖にスリットが深く入っているので、腕が華奢見え。腕を動かすたびにスリットから肌がのぞいて、所作もきれいに映ります。脚のラインをすっきり見せるレギンスパンツは、ボリュームのあるトップスと好相性です。

上下でスリットの二重奏　クールに「シュッと見え」

胸の正面に縦スリットを入れると、クリーンで大人っぽい雰囲気に仕上がります。首が詰まったノースリーブのブラウスにも軽やかさをもたらすディテールです。カットソーやシャツに重ねて、ジレ（ベスト）のような使い方もできます。

ライトリバーブラウスはコート地を使用しながらも、軽く柔らか。シルエットはコンパクトでありつつ、適度な張り感を備えています。ドライフレアリブパンツにも裾フレアの内側にスリットが施されました。スリットが開くことによって、エレガントな抜け感が生まれる仕掛け。ブラウスのスリットとの相乗効果で一段と軽快に映ります。

スリット×ほんのりシアーであでやかレッドコーデ

スリットの使い方が一段と多様化してきました。近年はフロント（正面）に入れるデザインが増えて人気を呼んでいます。立体感が際立つのに加え、着心地がアップ。レイヤードの「見せどころ」にもなってもらえる点でいいことずくめです。

膝下まで届くマキシレングスのウールミドルゲージロングジレはフロントに深々と入れたスリットがモード感たっぷり。縦長に映る効果も発揮しています。程よく目が詰まった、ウール100％の編み地はドレス感覚でまといやすそう。シアーウールローンタックパンツは柔らかなシアーの素材感が軽やかで穏やか。程よいワイドシルエットで、ハンサムさも宿しています。この秋のトレンドカラーのレッドで全身をあでやかなワントーンに彩りました。

かすかなシアーでジェンダーフリュイド風味に

スリットと同じく、透けるシアーも進化が続いています。近ごろはマニッシュな感覚やスポーティーなムードでのシアー使いが登場。ブラウスやスカートに加え、ジャケットやブルゾンにも取り入れられていてハンサムと儚げが溶け合うかのようです。

クレイペーパーナイロンブルゾンは紙のようにマットな質感がユニーク。うっすらと透け感を帯びた素材で、シャツ風シルエットのブルゾンにシアー演出を生かしています。控えめな透け加減とハンサムなたたずまいで、メンズ風味に仕上がっています。ニットビスチェの上からふんわりと羽織って。性別にとらわれないジェンダーフリュイド的な風情に。着心地の楽なヴィスポンチワイドパンツが凜々しいイメージを寄り添わせました。

黒でつくる新感覚シアーの装い

はかなげ感や妖精っぽさが持ち味だったシアーですが、進化形では透け感が目立たず、自在に着こなしやすいアレンジが広がってきました。素材の面でも、これまでのチュールやシフォン、ジョーゼットなどに加え、ニットが登場。新たな質感を提案しています。

シアーパフスリーブニットはマットで好発色の合繊シアー素材で仕上げた、軽やかなニットプルオーバーです。ボリューミーな両袖が目を引きます。重心が高く見えるのに加えて、二の腕もカバー。透けすぎない風合いだから、出番を選びません。ボトムスはスカート見えする2WAYレーヨンストレッチワイドパンツをチョイス。ゆったりした量感がトップスと伸びやかに調和しています。

快適さが際立つクチュールデザインで、日常を華やかに彩って

「ル フィル」は2019年に「ADORE（アドーア）」の新コンセプトブランドとしてデビューしました。「クリーンに削ぎ落されていること、快適であること、クチュール的で美しいことを大切に、しなやかに女性らしくありたいと願う大人の女性に向けたブランド」というコンセプトを掲げています。2024年春からはスポーティブ・ウェア「LE PHIL SPORTS」を発表しました。

クリーンなテイスト、コンフォートな着心地でありつつ、クチュール感を宿したデザインで支持を広げています。モード感とエレガンスのバランスが優れているから、自分らしく自在に着こなしやすいのも大人女性からの人気が高い理由。新たに提案されたスリット＆シアーのアイテムは素肌見せや透け具合が控えめ。幅広いシーンに着ていけそうなので、試す価値大のスタイリングです。

ファッションジャーナリスト　宮田理江