
義妹の自慢話
先日、夫と子ども二人と一緒に、夫の妹の結婚式と二次会に出席したときのことです。
義妹は、新郎が業界大手の会社に勤めていることを親戚に何度も自慢していました。
「やっぱり大きな会社って安心よね。福利厚生も違うし、将来も安泰だし」
色々と思うところはあったものの、何しろおめでたい日で、義妹はその主役。
余計なことは言わず、笑顔で聞いていました。
父の仕事を見下されて
ところが、二次会が始まってしばらくしたころ、義妹が私のところへやってきて、こう言いました。
「お義姉さんの実家って、小さな町工場でしょ? こう言っちゃ何だけど、うちの夫の会社とは格が違うわよね、格下よね」
確かに、実家は父が一人で切り盛りする金属部品の町工場です。
大きな会社ではありませんし、派手さもありません。
でも私は、実直に仕事に向き合う父の背中を、幼い頃から見てきました。
「父は、自分の仕事に誇りを持っていると思うよ」
なんとかそれだけ返して、笑顔を崩さないようにしました。
せっかくの結婚式で、言い争いをしたくなかったのです。
会話を聞いていた意外な人物
するとそのとき、近くを通りかかった新郎の勤務先の社長が、私たちの会話に足を止めました。
「失礼ですが、もしかして〇〇工業さんのご家族ですか?」
突然、実家の工場名を尋ねられ、私が驚きながらも「はい、〇〇工業は父が経営しています」と答えると……
社長は、笑顔でうなずいてこう言ったのです。
「うちの主力製品に欠かせない部品を、30年も作ってくださっている工場です。あそこが止まったら、うちは製品を出せません」
そして義妹に向かって、こう告げました。
「格下どころか、私のほうこそ、あの工場には頭が上がりませんよ」
義妹の顔から、みるみる笑みが消えていきました。
私はただ驚くばかり。
父が作っている部品が、そんなにも大きな会社を支えていたなんて、知りませんでした。
父の仕事が誇らしくなった日
「ごめんなさい、そんなつもりじゃ……!」と大慌てで謝る義妹。
新郎からも「なんて失礼なことを言うんだ」とたしなめられ、すっかり小さくなっていました。
帰宅してからも、社長の言葉が頭から離れませんでした。
父は仕事について多くを語らない人です。
今度実家に帰ったら、今日社長が話してくれたことを伝えて、父の仕事についてもっと聞いてみようと思います。
筆者の見解
会社の規模や肩書きだけで、人や仕事の価値は決められません。
目立たなくても、誰かを支えている仕事もたくさんあるということを、忘れずにいたいですね。
【体験者:40代・女性・主婦、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


