
嬉しそうに子どもをあやしていた頃
子どもたちがまだ赤ちゃんだった頃、夫はあやし方がとても上手でした。
夜中に泣き出しても嫌な顔ひとつせず、安心して眠るまで抱き続けてくれます。変な顔をして笑わせたり、やさしく話しかけたりする姿からは、我が子がかわいくてたまらないという思いが伝わってきました。
私は、楽しそうに笑う子どもと、たまらなく幸せそうな夫の様子を何枚も写真に残していたのです。
表情が硬くなって
しかし、子どもたちが成長した今、夫は仕事が多忙になり、帰宅後も疲れをにじませるようになりました。
休日には旅行や遠出を提案し、家族との時間を作ってくれます。それでも、ふとした瞬間に「以前より、表情が硬くなったな」と感じることが増えていました。
もちろん、夫が家族のために頑張っているのは分かっています。「疲れているのだから、仕方がない」と、深く考えないようにしていました。
子どもの大発見
ある日、昔の写真を整理していると、赤ちゃんだった下の子を抱く夫の写真が出てきました。夫は目尻を下げ、満面の笑みを浮かべています。
すると、その一枚を見つけた娘が、驚いたように声を上げました。
「見て、ママ! パパがこんなに笑ってるよ!」
その無邪気な言葉に、私は胸がぎゅっとなりました。娘にとって、パパの柔らかな笑顔は「写真の中で見つけるもの」になっていたのかもしれません。
久しぶりに家族で笑った朝
その夜、私は写真を夫に見せ、娘の言葉を伝えました。しばらく黙ったあと、「昔はこんな顔してたんだな」と苦笑い。
翌朝、夫は子どもたちに向かって、写真よりもさらに大げさな笑顔を見せました。
「パパ、その顔できるじゃん!」
娘の容赦ない一言に吹き出し、久しぶりに家族全員で大笑いしました。
筆者の見解
遠くへ連れて行くことだけが、家族を喜ばせる方法ではないのかもしれません。子どもが本当に見たかったものは、案外すぐそばにあるパパの笑顔だったのだと気づかされました。
【体験者:40代、筆者、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


