苦しそうな声が聞こえた4月1日のナースコール。急変を疑って駆け付けた、新人看護師だった筆者は、忘れられない出来事を経験することになります。

「うぅ……」苦しそうな声に急いで病室へ
新人看護師として働いていた頃のことです。
3月31日に夜勤入りをし、夜が明けた4月1日。
朝方は採血や申し送りの準備などで病棟中が慌ただしく、私も走り回っていました。
そんな時、普段ほとんどナースコールを鳴らさない患者さんから呼び出しがありました。
受話器を取ると聞こえてきたのは、
「うぅ……」と
いう苦しそうなうめき声。
私は「急変かもしれない」と思い、慌てて病室へ駆け込みました。
緊張が一気に解けた患者さんの一言
息を切らしながら病室へ入ると、患者さんはニヤリと笑って一言。
「毎日がエイプリルフール!」
その瞬間、私は何を言われたのか一瞬分かりませんでした。
しかし、患者さんの笑顔をみて、安心した反面、張り詰めていた緊張が一気に解け、思わず泣いてしまいました。
患者さんに悪気はなく、笑わせようとしてくれたことも分かっています。
だからこそ怒ることもできず、涙が止まらなかったことを今でも覚えています。
ただ、医療現場では「冗談だった」で終わらせることはできません。
結局その後、本当に心臓に異常がないか判断するため、医師の指示で心電図などの検査を行うことになりました。
患者さんも
「エイプリルフールや思って嘘ついたら、えらい目にあったわ」
と苦笑い。
冗談のつもりだった本人も、すっかり反省した様子でした。
筆者の見解
医療現場では、ナースコールが鳴るたびに「何かあったのでは」と緊張が走ります。
もちろん、患者さんとの何気ない会話やユーモアに励まされることも少なくありません。
ただ、急変を思わせるような冗談だけは、本当に命に関わる場面と区別がつかず、私たち看護師は一瞬で緊張状態になります。
笑いは大歓迎です。
でも、命に関わる症状と勘違いしてしまうような冗談だけは、ほんの少しだけ時と場合を考えていただけると嬉しいです。
今では笑い話ですが、あの日以来、4月1日にナースコールが鳴ると、ほんの少しだけ身構えてしまいます。
【体験者:30代・筆者、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Anne.R
看護師として9年間、多くの人生に寄り添う中で「一人ひとりの物語を丁寧に伝えたい」とライターの道へ。自身の家づくりやご近所トラブルの実体験に加え、現在は周囲へのインタビューを通じ、人間関係やキャリアなど女性の日常に寄り添った情報を発信している。

