
え、まだ賃貸なの?
ママ友のKさんとは、子ども同士が幼稚園で仲良くなったことがきっかけで交友が始まりました。明るくサバサバした人柄で、最初は話しやすい相手だと思っていました。
ところが会うたびに、Kさんはさりげなくこう言ってくるのです。
「え、まだ賃貸なの?」
悪意があるわけでもなさそうなのに、その一言がじわじわと刺さりました。
子どものために早く買わないと!
ある日の幼稚園行事で久しぶりに顔を合わせると、Kさんはまた同じ話題を持ち出してきました。
「子どもが小さいうちは一軒家がいいよね! もうそろそろ買わないと!」
そのとき、さすがにカチンときました。でも感情的になるのもちがうと思い、微笑みながらこう返しました。
「そうだね。でも私は、自分の生活が豊かならそれでいいと思ってるから」
短い沈黙の後、Kさんの表情がかすかに変わりました。その日以来、彼女がそのセリフを口にすることはなくなりました。
ママ友から威勢の良さが消えた
それから数週間後、Kさんが改まった様子でこんなことを打ち明けてきました。
「実は、家を売って引っ越そうかと思ってるんだ」
驚いて話を聞くと、ローンの返済が想定以上にきつくなり、賃貸に戻りたくても戻れない状況が続いていたといいます。
マウントをとっていたKさんの裏側に、そんな苦しさが隠れていたとは。気づかずにいたことが少し申し訳なくなりました。
体験者の声
その後、Kさんは本当に引っ越すことになりました。でも彼女の本音を聞けたことで、ふたりの関係はむしろ以前より近くなりました。
肩肘を張らずに話せるようになり、今では気軽に連絡し合える間柄になっています。
家を持つことも、賃貸を続けることも、どちらに正解があるわけではありません。それぞれの家庭に、それぞれの事情があります。あのとき正直に気持ちを伝えてよかった、と今でも思っています。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


