「上の子がかわいくない」なんて育児の都市伝説だと思っていましたが、自分が当事者だったと気づいた時、母の本音を聞いて傷つくと同時に、私にとっての長年のもやつきがストンと解かれていって──
画像: ftnews.jp
ftnews.jp

いつも、いつも、なぜか妹だった

2歳下の妹・Bとは、仲の悪い姉妹ではありませんでした。
ただ、子どもの頃から「なんとなく」が積み重なっていた気がします。

お菓子を分けるとき、Bの方から選んでいるように感じていました。
習い事を始めたいと言ったとき、私には「ちょっと考えよう」と言った母が、Bの希望はすぐに叶えていました。
友達のお泊まりも、私には渋い顔をしながら、Bには「いいんじゃない」とあっさり許可が出ました。

声に出して不満を言ったことはありません。
「お姉ちゃんだから」という空気が家の中にあって、私もそれを当たり前のように受け入れていました。
ただ、胸の奥に小さなもやつきが残り続けていたのも事実でした。

母は「平等にしているつもり」だった

大人になってからわかったことがあります。

母は意地悪をしていたわけでも、意図的に差をつけていたわけでも、まったくなかったのです。

あるとき、子育ての話になり、母がさらりと言いました。

「あなたもBも、同じように育てたつもりよ。どっちが可愛いとか、そういうのはないわよ」

悪意のない、本心からの言葉でした。
でも私は心の中で、静かに首を横に振っていました。
同じではなかった、と。
ただそれを言える空気でもなく、「そうだね」と笑って流しました。

母の、ぽつりとした告白

転機があったのは、自分が親になってからのことです。

子どもを連れて実家に帰ったある日、母と二人でお茶を飲んでいました。
孫の様子を目を細めて見ていた母が、ふと遠くを見るような顔になって、静かに口を開きました。

「正直に言うとね……あなたが小さいとき、かわいいって思う余裕がなかったんだよね」

一瞬、言葉を失いました。

母が続けます。
初めての育児で何が正解かわからず、毎日が必死だったこと。
余裕をなくして細かいことを気にして、怒ってばかりいた気がすること。
Bが生まれた頃にはようやく肩の力が抜けて、少しずつ育児を楽しめるようになっていたこと。

「だから、Bの方がかわいいって感じる場面が多かったと思う。あなたには申し訳なかったと、ずっと思ってたのよ」

静かな声でした。
長い沈黙の後、私はただ「……うん」とだけ返しました。

傷つきながら、腑に落ちた

傷つかなかったといえば嘘です。
やっぱりそうだったのか、という気持ちもありました。
子どもの頃に感じていた「なんとなく」が、気のせいではなかったと確認してしまった感覚。

でも不思議なことに、怒りはありませんでした。

自分も親になっていたからだと思います。
初めての育児がどれほど必死なものか、余裕をなくすとどれだけ笑顔が減るか、身をもって知っていました。
あの頃の母と、今の自分が重なりました。
愛情がなかったわけじゃない。
ただ、余裕がなかっただけだ——そう思ったら、すとんと腑に落ちたのです。

母も、完璧な人間ではなかった。
それだけのことでした。

気づいているあなたへ

「上の子がかわいくない」のは、愛情の差ではなく余裕の差だと、今は思っています。

初めての育児は、誰だって必死です。
正解がわからないまま、不安を抱えながら毎日をなんとか乗り越えていく。
そんな状態で、笑顔で余裕たっぷりに接することの方が難しい。
上の子が「かわいくない」のではなく、親が「かわいいと感じる余裕を持てない時期」に生まれてきた——ただそれだけのことかもしれません。

もし今、上の子への接し方が気になっているお母さんがいたら、こう伝えたいです。
気づいていること自体で、すでに十分だと思います。
あの頃の母には、自分を省みる余裕すらなかった。
でもあなたは今、ちゃんと向き合っている。

親も、完璧ではない一人の人間です。
それでも、我が子のことを思って悩めるなら、きっと大丈夫。
母の告白は、思いがけず私にとっての贈り物になりました。

【体験者:30代・筆者、回答時期:2026年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。
ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.