結婚や子育ては必ずしも自分の強い意思だけで始めるわけではありません。気づけば「周囲の言葉」に背中を押されていた、ということもあります。
筆者の知人A子もその1人でした。長年付き合った彼と結婚し、すぐに妊娠。しかしそこで待っていたのは、思い描いていた幸せとは違う現実でした。
画像: 周囲の空気に流されて結婚した私。妊娠中に豹変した夫を見て →『初めて自分の意思で選んだ道』は

世間に流されて決めた結婚

20代前半から付き合っていた彼と8年。親や親戚からは「そろそろ結婚は?」「子どもは早めに産んだほうがいいよ」など言われ続けてきました。

当時、私は仕事が楽しくて結婚を急ぐ気持ちはありませんでした。それでも何度も耳にするうちに「世間的には適齢期だし、そろそろ結婚したほうがいいのかな」と思うように──。

気づいたときには、心の奥の迷いを残したまま結婚へと進んでいました。結婚そのものに反対ではなかったものの「自分で選んだ」という実感は薄かったのです。

妊娠中に突きつけられた孤独

結婚後すぐに妊活を始め、幸運にも妊娠しました。ところがつわりは想像以上につらく、ほとんど寝たきりの生活に。仕事を続けることもできず、やむを得ず退職しました。

そんな私に冷たい言葉を投げかける彼。

「妊娠は病気じゃないだろ」

「寝てばかりでいいな」

結婚前の優しかった彼が、まるで別人のように感じられました。胸に広がったのは、どうしようもない孤独。初めて「結婚したのは本当に正しかったのだろうか」と自分に問いかけた瞬間でもあったのです。

娘を守るために強くなろうと決意

私はそれまで、周りの言葉に流されることが多く、自分の意思で行動した経験はほとんどありませんでした。彼との結婚だって、自分の気持ちより周囲の空気に押されて決めたものでした。自分の選択の結果に責任を持つことから、ずっと逃げていたのだと思います。

しかし、お腹の中に娘がいる今は違いました。「この子を守るために強くならなければ」と心に決めたのです。

まずは経済的に自立すること。そのために、子どもが幼くてもできる在宅ワークや資格取得の情報を探し始めました。机に向かう時間の積み重ねが、前へ進む力へと変わっていきました。

離婚を見据えて、それでも前を向く

やがて娘が誕生。彼も父親の自覚を持ってくれるのでは、とどこかで期待していました。けれど現実は違いました。泣いている娘を横目に、ソファでスマホをいじる彼。私が「少し抱っこしてほしい」とお願いしても「今疲れているから」と言って動こうとしない。

その瞬間、胸の中で何かが静かに壊れていくのを感じました。

──この人に頼るのは難しい。そう悟ったとき、私は「今すぐではなくても、いつでも離婚できる準備だけはしておこう」と心の中で決めたのです。

それは私にとって、初めて周りに流されず自分の意思で選んだ道でした。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。

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