これは筆者の友人から聞いたお話です。ある日、息子夫婦の家を訪ねたときのこと。
孫に会えるのを楽しみにチャイムを鳴らしたところ、玄関に出てきたのは息子だけ。嫁は台所から「いらっしゃいませ」と声をかけるだけで、玄関まで姿を見せることはありませんでした。「え、普通は玄関で出迎えるものじゃないの?」と友人はモヤモヤしたそうです。けれどもその後の出来事が、その思いを大きく変えていくことになりました。
画像: 息子夫婦の家に行くも、嫁の出迎えはナシ。「えっ、普通出てくるのでは?」モヤモヤが一転、私がハッとした理由

息子夫婦の家を訪ねて

ある休日、久しぶりに息子夫婦の家へ遊びに行ったときのことです。孫に会えるのを楽しみに玄関のチャイムを鳴らしました。しかしドアが開いても、そこに立っていたのは息子だけ。嫁は奥から「いらっしゃいませ」と声をかけてきましたが、玄関まで出てきてのお出迎えはなし。思わず「え? 普通、玄関まで出てくるのでは?」と戸惑いとモヤモヤが胸に広がりました。

嫁への違和感と心のざわつき

その日、嫁は台所で忙しそうに動いており、リビングに顔を出したのはしばらくしてから。「お義母さん、すみません。ちょうど準備していて」と笑顔で迎えてくれました。でも最初の印象が残ってしまい、「私って歓迎されてないのかしら」と心がチクリ。息子が「母さん、座ってて。ご飯すぐできるよ」と明るく声をかけてくれたのに、なんとなく素直に喜べない自分がいました。

孫と過ごす時間で気づいたこと

食事が始まると、孫が「ばあば、こっち座って!」と嬉しそうに手を引いてくれました。その瞬間、嫁がふっと柔らかい笑顔を見せたのです。「いつも私が相手しきれない分、ばあばが来てくれると助かります」と何気なくこぼした一言を聞いて、ハッとしました。玄関でのお出迎えがなかったのは、私をないがしろにしたわけではなく、台所で私たちのために一生懸命準備してくれていたからだったのです。

帰宅後にかかってきた息子の電話

その日の夜、家に帰ってしばらくしてから、息子から電話がかかってきました。「今日は来てくれてありがとう。嫁、朝からずっと楽しみにしてたんだよ」と言う息子の声に、少し驚きました。「え、そうだったの?」と聞くと、「うん。お義母さんに失礼がないようにって、すごく気にしてた。だから準備に集中してたんだと思うよ」と続けました。その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなり、あのとき感じたモヤモヤがスッとほどけていくようでした。

嫁なりの気遣いと私の思い込み

思えば、自分が若い頃、姑にどう接すればいいか迷っていた時期がありました。形ばかりの挨拶より、実際の家事や子育てを必死にこなすことで精一杯だった日々。その姿と嫁が重なり、「ああ、あの頃の私も同じだった」と心がほどけていきました。表面的な作法だけでなく、見えないところで動いてくれていることこそ、本当の“おもてなし”なのかもしれません。

親子関係に正解はないけれど

その日を境に、嫁への見方が少し変わりました。玄関でのお出迎えがなくても、孫と私を笑顔でつなげてくれているのは彼女の存在。息子が安心して家庭を築けているのも、嫁が支えてくれているからこそだと気づかされました。親子や嫁姑の関係に「正解」はなく、それぞれの形で思いやりを伝えているのだと思います。モヤモヤが一転して感謝に変わった出来事でした。

【体験者:40代・女性パート主婦、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。

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