筆者の話です。
母の好物はお寿司。
回転寿司ではタッチパネルやスマホでの注文が主流です。
機械が苦手な母と行くと注文係はすべて私。
慌ただしさを感じながらも、母の笑顔に「また連れていこう」と思い直します。
画像: 老親との回転寿司は難しい! 娘はタッチパネルでの注文と介助に大忙し。それでも『大切な時間』のワケ

母と出かける楽しみ

母はひとりでの生活が難しくなったため、施設に入所しています。
感染症などが落ち着いていると外出許可が出るので、買い物や食事に連れ出すことがありました。

母は昔からお寿司が大好きで、外食の機会を心待ちにしています。
外出時に一緒に回転寿司へ行くのは、親子での数少ない恒例行事。
車いすを押して店内に入ると、母の表情がぱっと明るくなり、身を乗り出すような仕草に心がはずんでいるのを感じました。
その姿を見ると私も嬉しくなるのです。

タッチパネルに苦戦する母

ところが、今は注文方法が大きく変わりました。
タッチパネルやスマホでの操作が主流になり、母には少しハードルが高い様子。
何があるかなと言われてタッチパネルを見せても、良くわからないと言い出す始末。

「これ、どうやるの?」と隣で何度も聞かれ、私が代わりに注文を入れることになるのです。
「ハマチはある?」「茶碗蒸しは頼める?」と矢継ぎ早に聞かれ、画面を探す目も追いつかず、あたふたしてしまいます。
一皿一皿、母の好きそうなものを探し出すのにも神経を使うのでした。

落ち着かない時間

母の好物を探して入力し、次々と届く皿を取り分けて……。
食事と介助と注文を同時にこなす私は大忙し。
正直なところ、自分のペースで味わう余裕はありません。
届いたものをとりあえず口に入れていくというもったいない食べ方に。
途中で「お茶がぬるい」と言われたり、醤油を取ってと頼まれたりと、気を配ることは尽きません。「せっかくの外食なのに」と少しモヤモヤする気持ちもありました。

外食の意味を思い直す

それでも、母が「美味しいね」と笑顔を見せるたび、胸の中の疲れは薄れていきます。
慌ただしくても、この時間が母にとって大切な楽しみであることは確か。

あと何回こんな時間が持てるだろう。
そう思うと、この時間をいっそう大切にしたいと感じました。
「また連れていこう」と思い直すのです。

【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。

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