筆者が学校を卒業して初めて勤めた職場には、Sさん(女性)という大先輩がいました。仕事ができるSさんを尊敬していた筆者ですが、ある日、とんでもない事実を知ってしまうことに……。
画像: 【離席が多い先輩】が気になる。ある日「女子トイレから変な声が聞こえる」確かめに行くと、そこには!?

大先輩・Sさん

私が配属された部署は、50名ほどの規模で、配属された新入社員は、一人ずつ先輩社員について仕事を教えてもらうことになっていました。

全部で3つの課に分かれていたのですが、隣の課にとても仕事のできる大ベテランの先輩社員・Sさんがいました。
きりっとした立ち居振る舞いは「クールビューティー」という言葉がぴったりで、上司からも一目置かれるほどの、私にとって憧れの存在でした。新入社員だった私は、いつかSさんのようになりたいと、密かに目標にしていました。

異変

入社して半年ほど経った頃、少し自分の仕事にも余裕が出てきて、周囲の様子を見ながら仕事ができるようになった私。
そこで気が付いたのは、Sさんの離席している時間がとても長いことでした。

会議や外出の予定はホワイトボードに書かれるはずなのですが、Sさんの欄は空白のまま。

最初は気にしていなかったものの、そのうち同じ部署の人たちが「電話の取次ぎができない」「どこにいるのかわからない」と困ることが増えてきたのです。

真実

そんなある日、同じ部署の人たちとお昼を食べていると、ある先輩が「最近、女子トイレから変な声が聞こえる」と話していました。

それから1週間ほど経った頃、私の教育係の先輩が困ったような顔をして上司と話をしていたので、何があったのかを聞くと「トイレの中から変な声がしたから、見に行ってもらおうと思って」と言いました。

その後、上司がトイレの中を確認すると、なんと便座に座って寝ているSさんが!
あれほど完璧で尊敬できると思っていた先輩が、トイレで居眠りをしていたのです。

バブルの裏側

後で聞いた話では、Sさんは毎日接待に行かなければならず「睡眠時間が少なくて眠かった」と言ったそうです。確かに当時はバブル絶頂期と言うこともあり、接待は毎日のようにありました。

しかし、その過酷な現実を目の当たりにした衝撃は大きく、私の中でSさんに対する憧れのイメージは音を立てて崩れました。Sさんに対する同情の念はありましたが、プロの理想像が打ち砕かれたことで、その日からSさんを見る目が変わってしまったのはいうまでもありません。

Sさんに対して特にお咎めはありませんでしたが、この一件は私に、華やかなバブルの裏側にある過酷な現実を見せつけました。仕事ができることと、人間の生理的な限界の間で苦しむSさんの姿は、単なる「幻滅」では言い表せない、複雑な感情を私に残しました。Sさんを見る目は変わってしまいましたが、それは同時に、当時の異常な労働文化に対する、静かな違和感へと繋がっていったのです。

【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:RIE.K
国文学科を卒業しOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。シングルマザーとして子供を養うために、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。

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