保育園で働いていた筆者が経験した、「お迎えギリギリからの長話」に関するリアルなエピソード。保護者の話に丁寧に耳を傾けることは大切な仕事の一つ。とはいえ、毎日のように閉園直前に現れて、そこから長話がスタートするという状況に、正直こたえる部分もある。保育者の「わかっているけれど、ちょっぴりしんどい」という本音を少し暴露しちゃいます。
画像: <保育士の本音>お迎えギリギリからの長話に「あと15分早く来てくれたら」と願う【切実な理由】

閉園1分前、そこから始まる「今日の話」

そのお母さんは、よく閉園時間ギリギリにお迎えにやってきます。
「すみません〜!」と笑いながら登場し、にぎやかに子どもを迎えに来る姿は、いつも元気で明るい。でも、帰る準備をするわけでもなく、そこからが“本番”のように話し始めるのです。

「先生、聞いてくださいよ~!」

「今日、仕事で本当に大変でね……」

立ち話が始まり、こちらが相槌を打ちながら話を聞いていると、お母さんの表情が少しずつやわらいでいくのがわかる。「ああ、今、この人は“話を聞いてもらうこと”で心を整えているんだな」と感じるのです。

保護者とのコミュニケーションも「大切な仕事」

保育士の仕事は、子どもと過ごす時間だけではありません。
保護者とのやりとりも、同じくらい大切な役割のひとつ。ときには、ちょっとした雑談や相談が、その日の家庭での育児や夫婦関係の安定につながることもあるからです。

子どもが安定して園生活を送れる背景には、保護者の安心や信頼があります。保護者とのコミュニケーションは非常に大切で、保護者が話してくださる話を聞く時間は、単なる雑談ではなく「大切な時間」だと感じています。

でも、そんな日が続くと

ただ正直に言えば、「閉園1分前からの長話」が続くと、体にも心にもこたえます。
本来、保育園の開所時間は決まっていて、我々にも勤務時間というものが存在します。全員が帰った後に、片付けなども待っているし、何より私自身、我が子が待つ家庭があるのです。

お母さんの話を聞きながら、「あと15分早く来てくれたらな……」と正直感じてしまうこともありました。

「保護者対応も大事な仕事」とわかっていても、勤務時間を超えての対応が日常になると、ふと心のバランスが崩れそうになる瞬間が訪れるのです。

「共感」と「線引き」のあいだで

あの頃の私は、「聞くことがケアになる」と理解していたし、心からそう思っていました。一方で、同時に「これが“当たり前”になってしまうことを恐れる自分」にも気づいていました。

保育者が、いつでもどんなときも機械のように完璧な対応をできるわけではありません。
「話すことで楽になるお母さん」もいれば、「聞き続けることでバランスが崩れていく保育者」もいる。どちらも本当のことで、どちらか一方だけが我慢し続けるのは違うと、今なら思えます。

終わりに

お迎え時間は、子どもたちにとって「おうちの時間」の始まり。そして保育者にとっては閉園の時間は「仕事の終わり」の時間。
そのほんの数分の“重なり”に、保育者も保護者も思いやりと小さな気遣いがあるだけで、お互いの安心につながるのではないかと感じています。お迎えの時間にちょっとした一言を添える、あるいは相談が必要な場合は時間を改めてもらうなど、お互いを尊重するコミュニケーションのあり方を、園全体で考えるきっかけになれば幸いです。

【体験者:30代・筆者、回答時期:2025年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。

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