幼い子どもの「これがいい!」という自己主張に、戸惑いながらも成長を感じる場面は多いものです。
知人で保育士のA子が語ってくれたのは、そんな子どもたちの着替えをめぐる、微笑ましくも少し考えさせられる日常。子どもの意思と保護者の思い、そして現場のリアルが詰まっていました。
画像: 園児「自分で選ぶ!」上下柄と柄の“ちぐはぐコーデ”。ママから保育士に寄せられた『思わぬ要望』

泥だらけの笑顔と、慌ただしくもにぎやかな毎日

朝の登園が始まると、にぎやかな1日がスタートします。私が担当する2歳児クラスは、あっちで泣き声、こっちでおしゃべり。静けさとは無縁ですが、その分とてもにぎやかです。

園庭では泥だらけになって夢中で遊び、服はすぐにお着替えコース。2歳児とはいえしっかり「こだわり」がある子も。「これがいい!」「ピンクじゃなきゃイヤ!」と堂々の主張。

そんな姿に、「もう立派な『自分』があるんだな」と、ついほほ笑んでしまいます。

柄と柄がケンカしても、本人はご機嫌

着替えの時間には、「自分で選びたい!」という声が次々あがります。とはいうものの、持ち物の中から選ぶので、コーディネートはなかなか自由すぎる展開に。

上がボーダーに下はストライプ、チェックにチェック。上下で柄が大げんかしている日もありますが、子どもたちはどこ吹く風。

鏡も見ずに「できた!」とニコニコ顔を見せてくれる姿に、「うん、それが1番だね」と思わず拍手したくなるのです。

保護者の声に立ち止まるとき

ある日、保護者の方からの連絡帳に「着替えはできれば上下のバランスも見ていただけると嬉しいです」と書いてありました。

そのお気持ちはよくわかります。忙しい朝に選んだ服、やっぱり整った状態で着てくれていたら嬉しいものです。

私はこう返しました。「◯◯ちゃんが『これがいい』と選ぶ姿も大事にしたいので、できる範囲で対応しますね。組み合わせやすい服を入れていただけたら助かりますが、ご無理はなさらずに」と。

すると後日、その保護者の方がぽつりと話してくれました。

「うちはいつも、親が選んで着せていたんです。子どもに選ばせるなんて、考えたこともなくて……」

保護者の方は、私が子ども一人ひとりの「選ぶ気持ち」に丁寧に向き合っていたことに、驚いたと同時に、ありがたい気持ちでいっぱいになったそうです。

「似合う」より、「これが好き」を大切に

保育園も家庭も、小さな格闘の日々です。忙しい時間の中で、すべてを完璧にはできません。

でも、「自分で選んだ!」という体験が、子どもたちの心をピンと立たせてくれる瞬間があります。

今日も「先生、これ着る!」と元気な声が響きます。コーディネートは自由奔放。でもその目は、まっすぐで誇らしげ。

私はそっとつぶやきます。

「好きって気持ちがあれば、それだけで十分なんだよね。」と。

【体験者:30代・女性保育士、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.